婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
入浴を終えて再びリビングに戻った私を、琉生さんが穏やかに迎えてくれた。

ルームウエアは菫のものを借りていたため持っていなかったので、琉生さんの服を借りた。

身長差があるのでとても大きく、裾を踏まないように幾重にも折る。


「やっぱり大きいな……髪、乾かした?」


「はい」


答えた途端、長い指が私の髪を軽く梳く。


「まだ濡れてる。このままじゃ風邪を引く。待ってて」


そう言って、私をその場に留める。

ドライヤーを洗面所から持ってきた琉生さんは床にクッションを敷き、私を座らせた。


「自分でできるし、もう乾いているから平気です」


「いいから、前を向いて」


 
予想外の行動と発言にうろたえる私をよそに、彼は自身の体で後ろから私を囲うように座り込んでドライヤーをかける。

額やこめかみ、首筋に繊細に触れる指先がくすぐったいし、近すぎる距離に落ち着かない。

ドライヤーのスイッチを切った後、大きすぎてもたつく袖に気づき、頬を緩めながら折ってくれた。

伏せたまつげの長さと整った容貌はやはり見慣れず、恥ずかしさもあり直視できない。

いくら結婚する予定とはいえ、これまで交際相手の自宅に泊まった経験などなく、どう振る舞うのが正解かわからない。

恋愛偏差値の低さに落ち込む。
< 68 / 155 >

この作品をシェア

pagetop