婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
当時の俺は人見知りが激しく、上手く話せなかった。

だが彼女は嫌な顔ひとつせず明るい笑顔を向けてくれた。

いつの間にか彼女に会えるのが楽しみになり、母の健診日を待ち望み、一緒に行きたいとせがむようになった。

母が無事に弟を出産した後、一度は会いに行った記憶がある。

でもそれから母が本格的に仕事復帰したせいもあり、彼女の元を訪れなくなった。

母に連れて行ってほしい、場所を教えてほしいと幾度となくねだったが、仕事、家事、育児に忙しい母に余裕はなく無理だった。

しかも母は店名を勘違いして記憶していたようで、自分で捜しても見つけられなかった。

幼い俺はずいぶん落ち込んだ。

なぜそんなに会いたいのと母に呆れられたが、自分でもよくわからなかった。

でも彼女の存在は当時の俺にとって大きな支えだった。

兄になる嬉しさと小さな不安を素直に表現できる唯一の存在が彼女だったのかもしれない。

そのうちに学校や勉強、部活などに忙しくなり、大切だったけれど、彼女との時間は少しずつ思い出に変化していた。
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