婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
予備の服は持っていたけれど、カジュアルすぎて濃いネイビーのスーツ姿の彼と並ぶとチグハグな印象が否めない。

結婚の挨拶なので自宅で着替えたいと伝えたところ、琉生さんは快く聞き入れてくれた。

さらに途中で区役所に寄って婚姻届をもらおうと言われ、了承した。

琉生さんの運転する車に乗り、自宅に戻る。

マンション付近に瑛斗の姿はなく、ホッと胸を撫で下ろす。

そんな私とは対照的に、琉生さんは瑛斗が部屋の前にいる可能性もあると心配していた。

そして黒色の愛車をマンション近くのコインパーキングに止めて、部屋まで付き添ってくれた。

一応定期的に掃除しているとはいえ、異性を室内に入れるのは初めてで落ち着かない。

見られて困るものがあるわけでもないのに、ドキドキする。


「あの、急いで着替えるので好きにくつろいでいてください」


話しかけた私に、昨日の勤務時とは違う、少し柔らかくセットした髪を揺らして彼が微笑む。


「ありがとう。蕗、まだ約束の時間に余裕があるから急がなくていい」


先ほど母から、今日はカフェを臨時休業にして待っていると連絡があった。

大まかな内容はすでに知らせているけれど,どう切り出そうか思案しながら着替えを済ませた。
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