婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「大丈夫、説明は俺がするから」


「……ありがとうございます。なにもかも任せてしまってごめんなさい」


「お互いのための結婚なのだから、蕗が謝る必要はない」


「でも、母はカフェでの私たちを知っているので、なんでこんな短期間で結婚なんて展開になったのか、不思議がると思います」


勘の鋭い母は、私たちの割り切った関係を見抜く可能性が高い。


「なれそめに加えて、謝罪を重ねつつ話すうちに過去の出会いを知って、急速に仲が発展したと伝える。ああ、でも疑われないために、これから人目のあるところでは恋人らしく振る舞う必要があるな」


淡々と告げられ内心はとても動揺していたが、もっともな意見なので賛成した。


「だから蕗自身について教えてほしい。距離を縮めたい」


率直な物言いに、鼓動がひとつ大きな音を立てた。

契約結婚を疑われないようにするためだとわかっているのに、心が乱れて揺れ動く。


「は、い。私にも琉生さんを教えてください」


動揺を悟られないよう、必死に平静を装って答える。
 
彼が運転中でよかったと心から思った。
 
ほどなくして到着した実家では、母が満面の笑みで迎えてくれた。


「――蕗さんを私のすべてで大切にして守ります。どうか結婚をお許しください」
 

彼の真剣な眼差しと口調に心が震える。

< 89 / 185 >

この作品をシェア

pagetop