婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
見慣れた実家のリビングで、打ち合わせていたなれそめを説明した彼が母に頭を下げた。
 
私のために頭を下げてくれた彼に感謝とともに言葉にならない感情がこみ上げる。


「向さん、頭をあげてちょうだい。どうぞ娘をよろしくお願いします」

 
母の温かな声に琉生さんがゆっくり顔を上げた。


「昨日連絡をもらったときは驚いたけれど……向さんのように素敵な人が蕗の夫になってくれるなんて嬉しいわ。おめでとう」


「お母さん、ありがとう」


「ありがとうございます」


「大切な人に出会えてよかったわね、お父さんもきっと喜んでいるわ」
 

頬を緩めて祝福してくれる母に小さな罪悪感を抱く。


「……うん、だからお母さんは安心してこのままお店を続けてね」


「私のことはいいから、ふたりのこれからについてよく話し合いなさい。お互いに忙しい仕事なのだし」
 

あくまでも私たちの生活を心配する母に、今後の予定と相続の件を話す。

結婚式については婚姻届を提出した後で決めようとあらかじめ話し合っていた。
 
さらに瑛斗の件を琉生さんが話し、私の安全のためすぐにでも同居したいと告げた。

母は瑛斗の予想外の行動に驚き、心配していた。

ひかりさんに話して注意を促すべきではと口にしたが、結婚が耳に入ればどんな動きをするかわからないので、婚姻届を提出するまでは話さないでいてほしいと琉生さんが頼んだ。
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