婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
「蕗さんは私が必ず守ります」


彼の強い眼差しと揺るぎない口調に、母も渋々ながら納得してくれた。

彼のシンプルなひと言がじんわりと温かな熱を帯びて胸に染みこむ。

契約結婚の義務を、役割を、果たしてくれているだけだとわかっていても、ひとりでがんばらなくていいとなにもかも背負わなくていいのだと思え、心が軽くなった気がした。

その後、母に婚姻届に記入してもらい、引っ越し準備があるからと食事の誘いを断り、早々に実家を出た。

結婚の挨拶なのだし、もう少しゆっくりしてもよかったのだが、小さな嘘の積み重ねと熱を持つ頬の理由が見つからず、これ以上うまく取り繕える自信がなかった。

再び彼が運転する車で私のマンションに向かう。

ハンドルを操作する長い指を見つめながら礼を伝えた。


「琉生さん、一緒に実家に来てくれてありがとうございます」


「こちらこそ。オーナーに結婚を許していただけてよかった。慌ただしくて申し訳ない。蕗、もう少し実家にいたかったんじゃないか?」


彼の気遣いが嬉しい。


「またお店を手伝いに行く日もあるだろうし、大丈夫です。それよりもう一度自宅に寄ってもらってごめんなさい。できるだけ急いで荷造りします」


「いや、それは全然。焦らなくていい」


「……ありがとうございます」


色々な気持ちを込めて伝えた感謝に、琉生さんは正面を向きながら口角を上げた。
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