婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
まだ短い時間しか一緒に過ごしていないけれど、何気ない会話の端々に小さな思いやりや気遣いを何度も感じる。

押しつけがましくない自然な親切や優しさが嬉しい一方で、どう反応するのが正解かわからず、返答に窮する場合も多い。

こんな風に心が振り子のように揺れる男性に出会った経験がなく、戸惑ってしまう。

この結婚は相続問題をはじめ、私のほうが救われている部分が大きい。

彼が私に与えてくれたたくさんの安心や優しさを少しでも返せるよう努力しなければと心に念じ、車窓を流れていく景色を見つめた。
 


実家での挨拶から半月があっという間に過ぎ、彼と暮らす毎日に緊張しつつも少しずつ慣れてきた。
 
私のマンションは七月末の退去が決まり、必要最低限のものはすでに運んでいる。

琉生さんの自宅の家電類は新しく性能も良いので、私のものは家具も含め基本的に処分したりリサイクルに出す手続きを進めている。

琉生さんは彼の弟の宿泊部屋を正式に私の自室にしてくれた。

弟には結婚報告をし、宿泊部屋はなくなると告げたそうだ。

あからさまな物言いにうろたえたのは記憶に新しい。

六畳ほどの広さの部屋は日当たりが良く、大きなクローゼットがある。

琉生さんはドレッサー代わりにもなる書き物机、椅子、収納棚などを知らない間に注文してくれていて驚いた。

感謝を伝えた後、せめてなにかお礼をしたいと告げた。

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