婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
彼の実家から帰宅後、必要事項がすべて埋まった用紙を改めて眺める。

夫婦になる実感は正直まだ湧かない。

むしろ怒濤の展開に戸惑いながらも走ってきた印象が強い。

彼と私の勤務体系は異なるので、一緒に暮らしていても、ともに過ごすのはもちろん、会話できる時間もほぼ限られている。

私が休みで彼が海外フライトで宿泊になっている場合もある。

そんな日は、私の勤務状況を把握した彼が電話やメッセージでなにかしらの連絡をくれている。

とくに瑛斗の動きを琉生さんは心配していて、極力人気の無いところにひとりで行動しないように注意されている。

琉生さんは空港で助けてもらった日からずっと私を気にかけ、大切にしてくれている。

出会って間もない、契約結婚の相手にさえこれだけ優しいのだから、本当に愛する人にはどんな風に接するのだろうとふと思い、慌てて首を横に振る。


彼は自分の責任を果たしてくれているだけよ。


私は求められた責務を果たす、余計な詮索は必要ない。


わかっているのに、なぜか心が大きく波打つ。

広いリビングでひとりきり、これ以上の思考を放棄するかのように真っ暗に染まった窓をぼんやりと見つめ続けた。












< 94 / 185 >

この作品をシェア

pagetop