婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
『蕗、明日の休みはなにか予定がある?』


八月も初旬を過ぎ、毎日うだるような暑さが続いている。

早番の勤務を終えてスーパーで買い出しを済ませた帰り道、琉生さんから電話がかかってきた。

お互いのシフトは把握しているけれど、こんな風に電話がかかってくるのは珍しく、手にした荷物を腕にかけ直し応答する。

彼はこれから空港内でスタンバイ勤務らしい。


「ううん、とくには……」


『じゃあ明日婚姻届を提出しに行かないか? 俺も休みだから』


思いがけない誘いに瞬きを繰り返し、なんとか返答を繋ぐ。


「……う、ん」


『急に悪い。明後日から海外フライトが入っているし、俺たちの休みがしばらく重なりそうにないから……できるだけ早く提出したいんだ』


さらりと言われて、小さく胸が鳴った。


『大丈夫、ビックリしただけだから。考えてくれてありがとう。行ってらっしゃい』


『ありがとう。蕗もお疲れ様』


琉生さんは優しく告げ、通話を切った。

自宅に戻って着替えを済ませ、買ってきた物を手早く片付ける。

すると、ダイニングテーブルに置いたスマートフォンが再び震える音が聞こえた。

琉生さんがなにか言い忘れたのかと思い、急いで確認する。

画面には従弟の名前が表示されていた。

どうしようかと逡巡するが、着信はずっと続いている。
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