役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
第二章 住み心地改革、開始!
 ヴィンセント辺境伯領――隣国サーライト王国との国境近くに位置する自然豊かな場所は、数百年前に人々が生活を始めてから着実に発展を遂げる領地へと変貌をしていた。

 特に、国全体に這うように地面には魔力が宿っており、人々はそれを『土地の魔力』と呼んでいる。
 特に辺境領は、土地の魔力が強く影響をもたらしてくれているおかげで、日当たりのよさと澄んだ空気、透明な川水のおかげで、野菜や果物といった作物は質の高いものが収穫できる。
 さらに、魔力が少ない者や持たない者が多く滞在していたこともあり、彼らは皆魔法が使えない分、武力を高めていた。その風習は今も受け継がれており、その結果、国内でも一位二位を争うほどの武力を持つ騎士団となった。国の一大事には戦でも救助でも颯爽と駆けつけている。
 もはや、辺境と呼ぶには勿体ないほどの力を持つ領地と化していた。

 ――そんな領地に、今さら改革など必要なのか?

「ええ、必要です」
「そんな真顔で答えなくても……」

 コモンズ公爵家を出発し、途中役所に離縁状を提出してから一週間が経つ。
 執事として同乗しているクロードの至って真面目な返答に、メリッサは懐かしさを感じながら小さく苦笑いをする。
 ほつれが目立ったワンピースから一転、侍女のジェナが用意した上質なシルクのシャツに臙脂色のスカートを身につけ、艶のある金髪を綺麗に結い上げたメリッサは、従者たちとともに馬車に揺られていた。移動は続いているが、侍女の細やかな手入れのお陰で彼女の美しさは保たれたままだ。

 行き先はもちろん、叔父の待つヴィンセント辺境伯領。幼い頃は母とともによく帰省していた、メリッサにとって第二の家のような場所である。
 生前、母が体調を崩してからは商会の仕事に手一杯になってしまい、しばらく帰省していなかったのだが、叔父とは手紙のやり取りで近況報告をし合っていた。

「旦那様は、領地内の問題は滅多なことがない限り外に情報を漏らさないように努めるお方です。詳細は辺境伯家に着いてから直々にお話ししたいとのことでした」

 執事のクロードが淡々と説明する。以前は猛者の集まる辺境騎士団の中でも大いに活躍していた実力者だ。今回の迎えに護衛がついていないのは、メリッサの実力の他に、彼がいることも要因であった。

(クロードは叔父様に最も信頼されているから執事として側に置いている。……そんな彼がいても自分が話そうとしているって、相当危うい案件なのでは?)
< 11 / 90 >

この作品をシェア

pagetop