役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
 最後の情けとして残した鉱石も、きっと誰も気付いていないのだろう。離縁状も提出した今、コモンズ家がどうなろうがメリッサには関係ない。
 それを聞いたオルディンは納得したように頷いて、話を戻した。

「奴らの手の者が、土地の魔力を利用して何か企んでいるという情報をジェナが掴んだ。これ以上のことは防音魔法が施されていて聞き取れなかったらしい」
「なるほど、辺境伯領も舐められたものですね。もしかして、この『住み心地改革』は悪いことをしている者たちへの粛清も兼ねているのですか?」

 それはそれで腕が鳴る。メリッサが明るく問うと、オルディンの顔が一瞬にして引きつった。

「お前まで姉上と同じことを言わないでくれ。なんでも利用する大胆さは構わんが、脳筋で解決しようとするのはこちらの胃が保たない!」
「脳筋……私が?」
「無自覚か……まあいい。この改革の一番の目的は、領民たちを安心させてほしいのだ。幼い頃から帰省しては姉上とともに街を歩き、領民と触れ合ってきたお前ならできると信じている。そのうえで、怪しい動きをしている奴らの情報収集を行って欲しい。決して単身で殴り込みに行こうなどと、血迷った考えはするなよ?」

 オルディンはいつになく真剣な眼差しをメリッサに向ける。
 これは叔父からの姪へのお願いではない。ヴィンセント辺境伯領の領主として、メリッサ・ヴィンセントへの依頼だ。

(何より、ここはお母様が愛した領地。これほど重要な役目をいただけるなんて……私に期待してくれているからこそ、辺境伯家の者として試されている証拠!)

 商才に長けた父と、様々な才能と人望に愛された母。二人の背中をずっと見据え、目標にしてきたメリッサにはビックチャンスだ。
 資料をまとめると、立ち上がって恭しく一礼する。
「承りました。このメリッサ、必ずや領主様のお役に立ち、『住み心地改革』を完遂してみせますわ!」
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