役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
メリッサの生家であるクレイソン男爵家は代々薬師を生業としており、今まで数多くの商会に生成したポーションを卸していた。
ところが、病死した父親の後を追うように母親も亡くなったある日、コモンズ公爵が突然やってきた。
コモンズ公爵家は広大な領地を所有し、国内外に商会を展開する貴族だ。しかし、クレイソン男爵家は公爵家の領地には属しておらず、商会を通じての取引も含め、今まで一度も関わったことがない。
そんな相手がなぜ乗り込んできたのか――メリッサが困惑していると、両親が生前に公爵家から内密に金を借りていた事実を告げられた。
その額、金貨一千万枚。いくらポーションが高額で売れても、すぐに用意できる金額ではない。その証拠として、借用書に記載された署名が本物だと証明する鑑定書まで提示された。
突然のことに頭が真っ白になるメリッサは、金貨を用意する時間が欲しいと懇願した。すると、公爵はそれを見越していたのか、妥協案として息子のマルコムとの結婚を持ちかけてきたのだ。
『貴様の才能を公爵家のために使え。ポーションを売って稼いだ金は家へ入れる形で返済しろ。できなければ、フロウ子爵家に肩代わりしてもらおうか。万が一、借金を完済した暁には自由にしてやらなくもない。できるものならな!』
この時、コモンズ公爵家の領地に属している親戚の子爵家はようやく事業が軌道に乗ったばかり。無関係な人々を巻き込みたくないメリッサは、非道で理不尽な条件に頷くことしかできなかった。
それから半年間、メリッサは返済のためにポーションを作り続けた。しかし、いくら売っても借金が減る様子はない。毎月稼いだ金を公爵に渡すも、翌月には「先月は受け取っていない」などと言われ、なかったことにされてしまう。
さらに義両親は、彼女に食事を含む家族の団らんの場にいることを禁じ、寝床は物置を改良した狭く埃っぽい部屋を与えるなど、まるで使用人のような生活を強いた。
誰もが「使い勝手のいい働き蟻」だと嘲笑しても、メリッサは文句一つ言うことなく仕事に励み、家事と返済に追われる日々を送っていた。
ジェシカはその事情もよく知っているようで、マルコムに寄りかかってにんまりと勝ち誇った笑みを浮かべる。
「メリッサさん、マルコムとは幼い頃に結婚しようねとずっと約束していたのよ。どちらが愛されているかは一目瞭然だろうけど、悪く思わないでね?」
「ごめんね、ジェシカ。メリッサが早く借金を返してくれないから、君に正妻の座をあげられなくて……」
「いいのよ。私、あなたと一緒ならどこにだっていけるもの。お義父様、お義母様。不束者ですが、どうか私を受け入れてくださいませんか?」
「なんて健気な子なの……私は賛成ですわ! 愛想のない今の妻より、こんな可愛らしい子が娘になってくれるのなら大歓迎よ」
「そうか……エリーがそういうのなら構わない。メリッサ、早く返済の目処を立てろ。公爵家の輝かしい未来のためにな!」
義両親もジェシカに賛成し、メリッサに軽蔑の目を向ける。ここまで口を一切開かない。言われるがまま、されるがままのお飾り妻。
周囲がケラケラと嘲笑する中、彼女は冷笑した。
「――馬鹿馬鹿しくなってきたわ」
ところが、病死した父親の後を追うように母親も亡くなったある日、コモンズ公爵が突然やってきた。
コモンズ公爵家は広大な領地を所有し、国内外に商会を展開する貴族だ。しかし、クレイソン男爵家は公爵家の領地には属しておらず、商会を通じての取引も含め、今まで一度も関わったことがない。
そんな相手がなぜ乗り込んできたのか――メリッサが困惑していると、両親が生前に公爵家から内密に金を借りていた事実を告げられた。
その額、金貨一千万枚。いくらポーションが高額で売れても、すぐに用意できる金額ではない。その証拠として、借用書に記載された署名が本物だと証明する鑑定書まで提示された。
突然のことに頭が真っ白になるメリッサは、金貨を用意する時間が欲しいと懇願した。すると、公爵はそれを見越していたのか、妥協案として息子のマルコムとの結婚を持ちかけてきたのだ。
『貴様の才能を公爵家のために使え。ポーションを売って稼いだ金は家へ入れる形で返済しろ。できなければ、フロウ子爵家に肩代わりしてもらおうか。万が一、借金を完済した暁には自由にしてやらなくもない。できるものならな!』
この時、コモンズ公爵家の領地に属している親戚の子爵家はようやく事業が軌道に乗ったばかり。無関係な人々を巻き込みたくないメリッサは、非道で理不尽な条件に頷くことしかできなかった。
それから半年間、メリッサは返済のためにポーションを作り続けた。しかし、いくら売っても借金が減る様子はない。毎月稼いだ金を公爵に渡すも、翌月には「先月は受け取っていない」などと言われ、なかったことにされてしまう。
さらに義両親は、彼女に食事を含む家族の団らんの場にいることを禁じ、寝床は物置を改良した狭く埃っぽい部屋を与えるなど、まるで使用人のような生活を強いた。
誰もが「使い勝手のいい働き蟻」だと嘲笑しても、メリッサは文句一つ言うことなく仕事に励み、家事と返済に追われる日々を送っていた。
ジェシカはその事情もよく知っているようで、マルコムに寄りかかってにんまりと勝ち誇った笑みを浮かべる。
「メリッサさん、マルコムとは幼い頃に結婚しようねとずっと約束していたのよ。どちらが愛されているかは一目瞭然だろうけど、悪く思わないでね?」
「ごめんね、ジェシカ。メリッサが早く借金を返してくれないから、君に正妻の座をあげられなくて……」
「いいのよ。私、あなたと一緒ならどこにだっていけるもの。お義父様、お義母様。不束者ですが、どうか私を受け入れてくださいませんか?」
「なんて健気な子なの……私は賛成ですわ! 愛想のない今の妻より、こんな可愛らしい子が娘になってくれるのなら大歓迎よ」
「そうか……エリーがそういうのなら構わない。メリッサ、早く返済の目処を立てろ。公爵家の輝かしい未来のためにな!」
義両親もジェシカに賛成し、メリッサに軽蔑の目を向ける。ここまで口を一切開かない。言われるがまま、されるがままのお飾り妻。
周囲がケラケラと嘲笑する中、彼女は冷笑した。
「――馬鹿馬鹿しくなってきたわ」