役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
 その場にいた皆が耳を疑った。それは、今までのメリッサからは到底考えられない低く呆れた声色と、淑女とは思えぬ乱暴な言葉遣いだったからだ。

「は……? 今、なんて言った? いや、君が言ったのか?」
「あら失礼、つい本音が。……そうでしたか、そんなに私を追い出したいのなら、今ここで完済させていただきますね」

 そう言ってメリッサが右手を振った途端、何もない空間がぱっくりと裂けた。これは「収納魔法(マジックバッグ)」の一種で、異空間に作られた場所に大切なものを管理できる優れものだ。魔法に精通している者であれば造作もない魔法だが、義家族の前で見せるのはこれが初めてである。
 呆然とする彼らを横目に、メリッサは空間の裂け目に両腕を突っ込むと、ごそごそと何かを探し始める。そして目当てのものを見つけ、勢いよく引っ張り上げた。
 ドンッ!と大きな音を立ててローテーブルに叩きつけられたそれらは、パンパンに膨らんだ大きな金貨袋。どれも絞った口から溢れるほどの金貨が詰まっている。

「ここに、公爵家からお借りしていたという金貨一千万枚があります。どうぞご確認ください」
「な、なんですって!?」
「全額って……金貨一千万枚だぞ! 普通でも五年はかかるはずだし、家に納めていた額だって、五十枚なかったはずだ!」
「長くなりますので割愛しますが、やろうと思えば二週間程度で完済は可能でした。しかし、皆様はとても物忘れが激しい(・・・・・・・)ようでしたので、稼いだ額の四分の一に留めてお渡ししておりましたの。私の忠実な演技(フリ)、上手だったでしょう?」
「演技だと……? 貴様、コモンズ公爵家を馬鹿にしているのか!」
「そんな、滅相もございません! ――救いようのない馬鹿(・・)、とは思っておりますが」

 清々しい笑顔で「馬鹿」を強調し毒を吐くメリッサは、彼らの前にずっしりと厚みのある帳簿を叩きつける。
 そこには公爵家が今まで行ってきた領地経営の不正の記録が書かれていた。

「噂の存在は存じておりましたが、真っ黒だとは思いませんでした。もちろん商会や宝石商、領民からの証言もあり、ここにあるものはすべて裏付けもしています。調べればもっと出てくるでしょうが……これだけでも充分ですよね?」

 メリッサが叩きつけた帳簿の間から、挟んでいただけの書類がいくつか床に散らばった。後ろで控えていた使用人たちの足元にも届き、拾い上げると皆が目を見開いて小さく悲鳴を上げる。
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