役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
「以前クリスティーナ様に直していただいた魔道具のオルゴールが壊れてしまったのです。亡き夫からもらった最初のプレゼントで……」
「見せてくれますか? ……これなら直せるかも」

 オルゴールを受け取り、意識を集中させて壊れている箇所を探す。
 メリッサの父は魔力量も使える魔法も少なかったが、その分誰よりも目利きに特化していた。どんなに優れた新商品も、細かい傷や欠陥品を見分ける力が高く、商人たちにも重宝されていたのだ。
 今にして思えば、あれは視力に魔力を集中させた鑑定眼だったのかもしれない。
 父の仕事の様子を近くで見て、見分けるポイントを事あるごとに伝授してもらったメリッサにとっては、魔道具の不備を見つけるのは容易なことだった。魔道具を直すには特殊な工具が必要だが、この程度であれば魔法で応急処置ができるだろう。

 メリッサは小さなオルゴールに手を添えて念じる。頭に浮かぶ映写機の構造や回路を辿って、壊れた箇所にピンポイントで魔力をゆっくりと流していく。すると、オルゴールはすぐに動き出し、可愛らしいメロディを奏で始めた。

「ああ、よかった……! ありがとうございます、ありがとうございますメリッサ様!」
「魔力を溜めておく動力パーツが欠けてしまったのね。直せたけれど、あくまで一時的なものだから、ちゃんと専門家に見てもらったほうがいいわ。工務店にも顔を出すから、後で来てもらうよう伝えておくわね」
「メリッサ様、こちらもお願いいたします!」

 勧められたものを吟味したり、近況を聞いたり、子どもたちにせがまれるとスカートに泥が跳ねたことにも気にせず一緒に走り回った。そして子どもたちにも同じようにいろんな話を聞き出していく。
(新しいことは、先住民から聞き出せってね)
 こうしてメリッサは、到着してものの一週間で辺境領の情報を頭に叩き込んでいったのだった。
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