役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
 村人の話からある仮説が浮かぶと、特に示し合わせたわけでもなく、メリッサとアルフォンスは顔を合わせた。そして、アルフォンスは山のほうを向くと、柄に手をかけた。

「俺は山に入って先行した部隊と合流する。ここは、君に任せていいのだろう?」

 アルフォンスはまっすぐメリッサに問う。
 そういえば、彼はなぜメリッサたちがここに来た理由を聞いてこない。まるでこの土地の問題を解決するためだとわかっているかのように進めている。

「もしてかして、叔父から何か聞いておられるのですか?」
「いや。ただ、オルディンが意味もなく君をここに送るようなことはしない。それがたとえ、君自身の意志だったとしても、いくつもの戦場を潜り抜けてきた『軍神』にはかなわない」

 メリッサの質問の意図に沿って答えるアルフォンスからは、オルディンを信頼しているのが伝わってくる。

(そういえば、殿下が幼い頃に辺境領で療養していたって聞いたことがある)

 当時メリッサはまだ赤ん坊で、男爵家で育てられていた事もあって入れ違いになってしまったけれど。そんな話を母から聞いたこともあったが、その頃からの付き合いであれば、納得がいく。きっと、今回の視察の件も事前に話していたのだろう。

「ならば、クロードを同行させてください。合流するとはいえ、道中でも王弟殿下の身になにかあれば、改革を任された私の責任です。クロードの実力はあなたが一番おわかりでしょうし、山の中腹辺りであればジェナの耳にも届くはずです。何かあれば、ジェナを呼んでください」
「しかし、君の従者を二人もこちらに負担させるわけには……」
「あら、私を誰だとお思いで? 貴族を潰した実績を持つ私が村一つ救えないなんて、領主様に怒られてしまいますわ」

 皮肉を込めて不敵の笑みを浮かべるメリッサ。アルフォンスは少し躊躇ったが、すぐに黙って頷いた。

「わかった。明日の明朝には戻る。クロード、ついてきてくれ」

 颯爽と走り出す二人の後ろ姿を見送りながらメリッサは苦笑した。我ながらドンと構えて前に出てしまった、と。不安そうにジェナが見つめてくるも、メリッサは自分を奮い立たせるように両頬をパン!と叩いて気合を入れ直す。
 そして空中を裂いて現れた収納魔法から分厚いファイルを取り出してジェナに渡した。
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