役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜

「片手間で構わないから、この辺りに配置された団員たちをリストアップしてくれる? 私は私のできることをするわ」
「か、かしこまりました……!」

 自分から発した言葉には責任を持たねばならない。
 ファイルをジェナに預けると、メリッサは村人たちと向き直った。

「確かにできることすべてをやり尽くしてきたと思います。でも、それだけで諦める理由にはならない。きっと突破口が必ずある。もう一度、私と一緒に探してみませんか」
「だから、アンタが来たところで何かが変わるわけが……」
「この土地の魔力はまだ生きている! それだけで、私が来た意味があります。それに、魔力がなくたって魔道具を作る技術で今まで乗り越えてきたでしょう? この村の野菜の品質が高いのは、徹底した管理が施されているからよ。……だから、私の賭けに乗ってくれません?」

 メリッサはそう言って、大きな羊皮紙を全員が見えるように広げて掲げた。

「メリッサ様、これはいったい……?」
「皆さんに、畑の水不足の解消と作業量を軽減するためにこの装置を作ってほしいのです」

 横に伸びた筒にいくつかの円柱が等間隔で並んでおり、水らしき線が飛び出している、ざっくりとしたイメージ絵だ。近くに畑の畝らしきものが描かれているから、おそらく畑仕事で使用する装置なのだろうが、子どもの落書きにも見て取れるそれに、村人たちは首を傾げながら見入る。

「畑から川まで距離があるでしょう? バケツで行ったり来たりするには、舗装されていない道のりは大変だと思うわ。水魔法も必要な時に使えなければ意味がない。……だから、直接水路と繋げてしまいましょう。水路を増やすのが難しいなら、パイプを敷いて、ポンプの要領で吸い上げるのはどうかしら!」

 メリッサのイメージはこうだ。
 まず、地中をある程度掘った上で水の通り道になる魔道パイプを設置。吸い出し口は少量の魔力で開閉できる仕様にして、魔道具に含まれた魔石の力で水を吸い上げる。

 魔道パイプを通った水は、畝に沿って枝分かれした道を辿り、等間隔に置かれた吹き出し口から魔石と水圧を利用して回転、霧状に噴射して広範囲に散水する――という仕組みだ。

「これは元々、異国から輸入された書物から見つけた散水機(スプリンクラー)という農具の一種らしいの。もしこの散水機に魔石の力を加えた、魔道散水機を作れたら、広範囲の畑でも水を撒く作業を可能な限り減らせるし、均一に水を撒くことができるんじゃないかしら。魔石の力を利用するから魔力は使わないし、水圧を調整して水を組み上げるポンプの仕組みが理解できれば、理論上は誰でも使えるようになるはずよ」
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