役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
 村人たちは設計図とメリッサを交互に見ながら、気難しそうに眉をひそめる。何か文句を言いたげな表情に、メリッサは先手を打った。

「私が辺境伯領に帰ってきて、初めて口にした料理はなんだと思う?」
「は……?」
「野菜よ。生野菜のサラダに、焼いたロメインレタスのシーザーサラダ。ドレッシングの味よりも、野菜本来の旨味が主張されていてとても美味しかったわ。具沢山のスープは肉や魚よりも野菜が主役だった。どれも、この村で収穫された野菜ばかりを使ってくれたの」
「…………」
「私は、この村で育てられた野菜が食べられなくなるのは嫌。ヴィンセント辺境伯領にとって大損害よ! あなたたちの品質管理は、後世に誇るべき財産なのよ!」

 一見、メリッサが彼らに協力を仰ごうと一方的に演説しているだけに見えたが、村人は皆、彼女の言葉を聞き入った。自身で懇切丁寧に作り上げた野菜を、あまりにもメリッサが嬉しそうに頬を緩ませて語る姿を見て、呆気を取られながらも胸の奥がざわついたのを感じていた。
 素直に嬉しいのだ。毎日丁寧に水をやり、育て、収穫した野菜を褒められたことが。

「丹精込めて育てられた作物は嘘をつかない――それを一番理解しているのはあなたたちだと、私は思います」

 まっすぐ彼らを見据える。なんとも挑発的な問いかけだったが、少しでも誰かの心を駆り立てられるのなら――そんな淡い期待を込めて言葉を紡ぐ。
 川は完全にせき止められているわけではない。山に入ったアルフォンスたちが改善してくれるはずだ。最悪戻らなかったその時は、水脈を探して井戸を作ろうとまで考えている。

 どのみち、どれだけ読み漁った知識を詰め込んで合理的な計算をしたところで、魔道具作りの経験値がほぼゼロに近いメリッサは素人同然。村人たちの協力がなければ成立しないのだ。
 すると、困惑する彼らの中から一人、魔道具作りに長けた者が前に出て、設計図にかじりつくように見ながら口を開いた。
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