役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
「うむむ……確かに、異国の広い地域で散水機が導入されているとは聞いたことがあります。ただ、このでこぼことした不規則な土地で、大掛かりのパイプが繋げられるかが難しいところですな。ある程度は耐久性も高くなければ、土地の魔力に圧されて破裂することも考えるとなると……」
「それなら、パイプで使われているステンレス鋼管に伸縮魔法を付与するのはどう? ビニルホースみたいにこう、ぐねぐねさせて……硬化と錆取りの魔法で耐久性と耐震性を高めるとか」
「土の中に隠すなら、いくら魔法を付与したところでパイプ自体が保たねぇ。魔石でコーティングしないと無理だと思うが、メリッサ様ならどうする?」
「そうね……土地の魔力と相性の良い魔石で加工したら、突然地震で地面に影響があっても耐えられると思うわ。でもその魔石を選ぶのが難しいかしら。足りない分は私から領主様に頼んで魔石を卸してもらうけれど、できればその土地に近い場所から見つかった物のほうが馴染むのは早いわよね……?」
「それならつい最近、隣の村で鉱山が見つかった場所がある。事情を話して分けてもらうこともできるんじゃないか? あとはどうやって加工するか、だな」
「魔石は性質次第では砕くことも溶かすこともできる。パイプに直接塗るような、コーティング剤にするのはどうかしら」

 次々に前に出て意見を求めてくる村人たちに、メリッサは一つずつ答えていく。それらは主に魔法の付与や魔石といった、メリッサの得意分野ばかりだ。
 書物に記されていた散水機の構造について聞かれるのならまだしも、魔道具を作る前に自身の魔法で土地をなんとかしろなど言われるのではと身構えていたのだが、どうやら杞憂に終わったようだ。
 この村の多くは魔道具作りが本職。素人同然のメリッサの提案が現実的でなければ即却下していることを踏まえると、どうやら前向きに受け取ってくれているらしい。

「水やりは楽になるけど、肥料を撒いたりする時に邪魔にならないかな……? 日頃のメンテナンスも必要だし」
「でも水やりが一定に行えているのなら、我々は虫の駆除や品質管理に手を回せるよ。この際、虫よけの魔道具を改良のするのもいいかもしれない」
「魔道具を動かすための魔法陣にも、回路の仕組みを組み込んでみようか。これはどうだろう?」
「いいや、でもここは……」

 村人たちはメリッサの設計図に顔を寄せ、時折難しそうに眉をひそめながら見入っている。
 次第に仲間同士で話し合い、ああだこうだと意見を重ねていく。するとしばらくして、息を潜めるようにしていた先程とは一転、未知の設計図を前に、何かをしたいとそわそわしているのが見て取れた。

「図面は書き直す必要があるな。こんな落書きじゃあ寸法もわからねぇ」
「落書きって……ちょっとひどくない?」
「えっ! これメリッサ様が描かれたんスか!?」
「なぁ村長、魔石はどれぐらいあればいい? 今から行ってかき集めて……って、村長?」
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