役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
「雨みたいに上から降らす形が良さそうね。……これで、どうかしら!」

 両の手のひらを開いて魔力を集中させると、ポン!と小さな灰色の雲が現れた。
 雲はどんどん大きくなっていき、次第に両腕で抱えるほどの大きさのものが複数できあがった。それらは一つずつメリッサとともに水やりをする村人たちの元にやってくると、懐っこくすり寄っていく。

「め、メリッサ様、これは一体……? 中からゴロゴロと、雷が鳴る直前のような音が聞こえるのですが……」
「水魔法で作り出した雨雲よ。一気に散水してもいいのだけれど、この記録表を見ると、大雑把にしてはいけないと思ったの。この雲と一緒に畑を歩いてくれたら、畝に沿って雨を降らせてくれる仕組みになっているから、やってみて。大丈夫、雷は落ちたりしないから」

 今まであまり魔法に触れてこなかった村人たちは、半信半疑で畑の前に行くと、雲は畝の真上に移動し、ポツポツと雨を降らし、地面を濡らし始めた。次第にその様子が楽しくなったのか、特に子どもたちは雲に話しかけながら水やりをしていく。大人たちはいつものように土の湿り気をチェックしながら記録をつけていった。

(魔力がまったくない人たちだけではない。……となれば、魔法の使い方を指導できる人材を置いてもいいかも)

 信頼のおける騎士団員や指導者をケケ村に派遣させることができれば、この村はもっとできることが増えるはず。領都に戻ったらオルディンに相談してみよう。
 そんなことを考えながら見守っていると、様子を見にやってきた村長が言った。

「こんなに生き生きしている皆を見るのは久しぶりだ。あなたのおかげです。メリッサ様」
「……そう。なら、私が来た意味があったわね」

 初めてにっかりとした笑顔を浮かべた村長に、メリッサは釣られて笑ってしまった。
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