役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
クロードが引っ張るようにしてメリッサの前に突き出す。この村で唯一駐在している衛兵だ。
「水がせき止められていた付近でこそこそしていたのを見つけました。逃げ出そうとしたので、手荒な真似をしてしまいましたが……」
「ニルス……? なぜアンタがそんなところに? アンタがいないと村を守る衛兵がいないじゃないか」
困惑する村長をよそに、メリッサは拘束された衛兵と同じ目線になるように屈んだ。そしてうっすらと笑みを浮かべ、彼に問う。
「ごきげんよう、ニルス・ソルベンシー。水をせき止めていたのはあなたの仕業ね?」
彼女の一言に、村長は目を見開いた。ニルスと呼ばれた衛兵は一気に青ざめ、縋り付いた。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ、誤解だ! 俺はただ、水の安全を確認しようと」
「水路の近くには魔物の住処があるからと、村人たちを近寄らせなかったそうね。あの狂暴なダガーベアを退治するなんて、とても勇敢なのね」
「え、ええ! 俺は村に入り込もうとするダガーベアを……」
「ダガーベアの天敵は、この季節に咲くラック草の花粉。それは村だけでなく、水辺があれば山にも自生しているわ。でも、ラック草の自生地にダガーベアが近寄らないことはご存じ? ダガーベアはラック草が多く自生する水辺を避けるの。不思議な生態よね、彼らの水分補給は水たまりか、魔力で補っていると言われているわ。――衛兵なら皆、最初に叩き込まれるダガーベアの弱点よ。それで、あなたが退治したというダガーベアはどこに住んでいたのかしら?」
「うっ……!」
周囲の威圧に耐えきれなくなったニルスは、身体を震わせた。それだけで自分がやったと白状しているようなものだ。
(思った通り、やっぱり見たことがある顔。念のため全員のリストに目を通しておいてよかったわ)
村長から衛兵について話を聞いた際、メリッサは道中で読み込んでいた騎士団や王宮兵士の名簿を頭の中で開いた。
そして、ニルスの名を思い出すと、すぐにジェナに頼み、別途で調べてもらった彼の経歴と、コモンズ家で見つけた資料の内容を脳内で照らし合わせる。
メリッサは彼を知っていた。彼は、元夫宛てに手紙を送っていたのだ。
「水がせき止められていた付近でこそこそしていたのを見つけました。逃げ出そうとしたので、手荒な真似をしてしまいましたが……」
「ニルス……? なぜアンタがそんなところに? アンタがいないと村を守る衛兵がいないじゃないか」
困惑する村長をよそに、メリッサは拘束された衛兵と同じ目線になるように屈んだ。そしてうっすらと笑みを浮かべ、彼に問う。
「ごきげんよう、ニルス・ソルベンシー。水をせき止めていたのはあなたの仕業ね?」
彼女の一言に、村長は目を見開いた。ニルスと呼ばれた衛兵は一気に青ざめ、縋り付いた。
「ちょっ、ちょっと待ってくれ、誤解だ! 俺はただ、水の安全を確認しようと」
「水路の近くには魔物の住処があるからと、村人たちを近寄らせなかったそうね。あの狂暴なダガーベアを退治するなんて、とても勇敢なのね」
「え、ええ! 俺は村に入り込もうとするダガーベアを……」
「ダガーベアの天敵は、この季節に咲くラック草の花粉。それは村だけでなく、水辺があれば山にも自生しているわ。でも、ラック草の自生地にダガーベアが近寄らないことはご存じ? ダガーベアはラック草が多く自生する水辺を避けるの。不思議な生態よね、彼らの水分補給は水たまりか、魔力で補っていると言われているわ。――衛兵なら皆、最初に叩き込まれるダガーベアの弱点よ。それで、あなたが退治したというダガーベアはどこに住んでいたのかしら?」
「うっ……!」
周囲の威圧に耐えきれなくなったニルスは、身体を震わせた。それだけで自分がやったと白状しているようなものだ。
(思った通り、やっぱり見たことがある顔。念のため全員のリストに目を通しておいてよかったわ)
村長から衛兵について話を聞いた際、メリッサは道中で読み込んでいた騎士団や王宮兵士の名簿を頭の中で開いた。
そして、ニルスの名を思い出すと、すぐにジェナに頼み、別途で調べてもらった彼の経歴と、コモンズ家で見つけた資料の内容を脳内で照らし合わせる。
メリッサは彼を知っていた。彼は、元夫宛てに手紙を送っていたのだ。