役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
「お兄様のように家督を継いだり、商会を経営されていると思っていたけれど、三男のあなただけが衛兵として入団していたのが気になっていたのよ。王都からの出向と聞いているけれど、本当の目的はコモンズ家に関係するものではなくて?」

 彼の生家であるソルベンシー男爵家は、コモンズ家と関わりがある貴族の一つだ。メリッサがコモンズ家にいる間は顔を合わせたことはなかったが、マルコムとは同級生で、内密に手紙のやり取りをしているのを見かけていた。
 となると、彼はコモンズ家によって意図的に衛兵として派遣された可能性が高い。
 もう逃げられないと悟ったのか、ニルスは観念して口を開いた。

「……確かに、俺はマルコム様の命令でケケ村を乗っ取る準備を整えるために、王都からの派遣としてやってきました。川の水を制限していたのは、ケケ村での収入源である農業をコモンズ家の事績にするためだと」

 ケケ村の作物に目をつけたマルコムは、川の水が使えなくなることで作物の品質管理が難しくなるように仕向け、今までのクオリティを保てなくなったところを、颯爽と現れたコモンズ家が自身の手柄のように川の水を開通させ、恩を売る算段だったそうだ。
 ニルスは手引きするだけで、それなりの金をもらっていたという。
 話を聞いたメリッサは思わずため息をついた。ヒーロー気取りのような振る舞いをする計画は、見栄っ張りなマルコムの考えた策だった。

「……あなたも馬鹿ね。選ぶ相手を間違えたのよ」
「ああ、後悔しているさ! 近い将来、領地の一部の管理を任せてくれるから協力しろと、マルコム様にそそのかされたんだ。兄がどちらも立派に仕事をこなし、責務を果たしている一方で俺には何もなかったから、少しでも見返してやりたかったんです。でも、ケケ村の皆には良くしてもらった恩のほうが強くて、馬鹿らしくなって……もうこんなこと辞めようと思ったら、マルコム様に今までしてきたことを公にするって脅されて……何もできなくて……」

 さらに顔色が悪くなっていくニルスに、村長は静かに涙を流していた。
 ずっと村を守り、味方として信用していた村の仲間だ。今まで裏切っていたことを知って、落胆してもおかしくはない。怒りで今すぐ追い出したい気持ちもあるだろうに、杖を握る手をさらに強め、ぐっと堪えている。
 しかしニルスには、未だ知り得ないコモンズ家の情報を握っている可能性があった。メリッサとしても、このままにしておくわけにはいかない。
 アルフォンスは騎士団員に指示を出す。

「事情聴取は辺境騎士団で行う。先に領都へ向かってくれ。オルディンには先行して事情を伝えておく」
「殿下は一緒にお戻りになられないのですか?」
「村の魔道具作りが気になる。何かできることがあるかもしれないからな」

 表情には出ていないが、心無しかわくわくしている様子が隠しきれない王弟に、メリッサはどこか安堵するのだった。
< 35 / 90 >

この作品をシェア

pagetop