役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
第三章 挑戦はわくわくの始まり
「――スイーツが食べたいわっ!」
「わわわっ!?」
ケケ村での一件を終え、収穫した野菜の品質が持ち直し、ようやく落ち着いてきたある夏の昼下がり。
珍しく暑さが和らいだこの日、ヴィンセント辺境伯邸にある自室のバルコニーで、執務室から拝借した異国の古書を読みふけていると、突然何を思ったのか、メリッサが唐突に叫んだのだ。
紅茶のおかわりを注ごうとしていたジェナは驚いてビクッと身体を震わせる。耳の良い彼女にはたいそう心臓に悪い。
「あっ、ごめんなさい。ジェナ、大丈夫?」
「ええ……失礼いたしました。先程のレモンとラズベリーのタルト、足りませんでした? 厨房に追加で作ってもらいましょうか。でも夕食前ですし、食生活の乱れはお肌の乱れ……」
「ち、違うのよ! 実はとっても気になるものを見つけてね、気持ちが抑えられなくてつい……」
「気になるもの?」
焦った様子のメリッサはそう言って、古書のあるページを開いてジェナに見せる。
そこにはデーツと呼ばれる木の実について書かれていた。一粒が手のひらにすっぽり収まるサイズ感だが、噛むとねっとりした食感で、濃厚な甘みを持つ栄養豊富な「天然の甘味料」とも呼ばれているらしい。脂質が少ないこともあり、ダイエット中の栄養補給や健康的な間食に最適なのだそうだ。
しかしヴィンセント辺境伯領はもちろん、近辺諸国では入手困難とされているため、メリッサは実物を見たことはない。古書の内容が本当であれば、貴族でも手を伸ばすことが躊躇われている砂糖や蜂蜜といった、希少価値の高い甘味の代用品になるのではと考えたのだが……。
「これ絶対、世の中の令嬢は欲しいと思うのよね……とはいえ、遠い異国にしかないみたいだし、どう入手経路を確保するかが問題なのよ」
「確かに、甘くて太りにくい甘味なんて女性にとって最高の食材ですよね。……お嬢様のコルセットも以前より一段緩めていますし、導入できるならしたい……!」
思わずポロッとこぼれたお小言にハッとジェナが口を抑えるが、メリッサには聞こえていないようで、気に留めることなく黙々と魔法ペンを走らせ、商会リストと流通経路の候補を書き出していた。使用者が調べ物をしている一方でメモ書きをしてくれる機能は、思っていたより重宝している。
「難しいわね……種が一つでもあれば、適した環境でのハウス栽培が検討できるのに……!」
「あっ! では、アルフォンス殿下にお願いするのはいかがでしょう? ちょうど国外へ視察に行かれているんですよね?」
「わわわっ!?」
ケケ村での一件を終え、収穫した野菜の品質が持ち直し、ようやく落ち着いてきたある夏の昼下がり。
珍しく暑さが和らいだこの日、ヴィンセント辺境伯邸にある自室のバルコニーで、執務室から拝借した異国の古書を読みふけていると、突然何を思ったのか、メリッサが唐突に叫んだのだ。
紅茶のおかわりを注ごうとしていたジェナは驚いてビクッと身体を震わせる。耳の良い彼女にはたいそう心臓に悪い。
「あっ、ごめんなさい。ジェナ、大丈夫?」
「ええ……失礼いたしました。先程のレモンとラズベリーのタルト、足りませんでした? 厨房に追加で作ってもらいましょうか。でも夕食前ですし、食生活の乱れはお肌の乱れ……」
「ち、違うのよ! 実はとっても気になるものを見つけてね、気持ちが抑えられなくてつい……」
「気になるもの?」
焦った様子のメリッサはそう言って、古書のあるページを開いてジェナに見せる。
そこにはデーツと呼ばれる木の実について書かれていた。一粒が手のひらにすっぽり収まるサイズ感だが、噛むとねっとりした食感で、濃厚な甘みを持つ栄養豊富な「天然の甘味料」とも呼ばれているらしい。脂質が少ないこともあり、ダイエット中の栄養補給や健康的な間食に最適なのだそうだ。
しかしヴィンセント辺境伯領はもちろん、近辺諸国では入手困難とされているため、メリッサは実物を見たことはない。古書の内容が本当であれば、貴族でも手を伸ばすことが躊躇われている砂糖や蜂蜜といった、希少価値の高い甘味の代用品になるのではと考えたのだが……。
「これ絶対、世の中の令嬢は欲しいと思うのよね……とはいえ、遠い異国にしかないみたいだし、どう入手経路を確保するかが問題なのよ」
「確かに、甘くて太りにくい甘味なんて女性にとって最高の食材ですよね。……お嬢様のコルセットも以前より一段緩めていますし、導入できるならしたい……!」
思わずポロッとこぼれたお小言にハッとジェナが口を抑えるが、メリッサには聞こえていないようで、気に留めることなく黙々と魔法ペンを走らせ、商会リストと流通経路の候補を書き出していた。使用者が調べ物をしている一方でメモ書きをしてくれる機能は、思っていたより重宝している。
「難しいわね……種が一つでもあれば、適した環境でのハウス栽培が検討できるのに……!」
「あっ! では、アルフォンス殿下にお願いするのはいかがでしょう? ちょうど国外へ視察に行かれているんですよね?」