役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
「なんでも、ここから少し離れた国ではコロンによく似た万能の実があるそうなのです。おそらく偽造して売り渡すつもりだったのだと……」
「それって、薬にもなると聞いたことはあるけれど……本当にそれだけ? コロンの実の成長は凄まじいものよ。自然から生み出されるものを人間が隠し通せるわけがないわ。学園でも商会でも、お茶会でも話題に上がるほど有名な話なのに……いつかばれると思わなかったのかしら」
「ええ、そこは我々も同じ意見でしたので、聞いてもらったんです。どうやら多く余ったら、国外不出のものを輸出入するためのカモフラージュに使うつもりだったと自供したそうで……あんなに大量にあっても、防腐の魔法付与ができなければ長期保存も難しいのに……」
がっくりと肩を落とすジョン。ソフィアも居た堪れないようで、膝に乗せた手をぎゅっと握った。これにはメリッサも大きな溜息を吐いた。
「私たちの不注意でこんな事になってしまい、本当に申し訳なく思っています。ですが、このままコロンの実が増え続ければ、いずれ果樹園は侵食されてしまいます。現に品種の近い林檎の木が数本、コロンの実の影響を受けて上手く実れていないのです」
「大ピンチじゃない! 果物の生命線だけでなく、果樹園の運営も影響が出てしまうわ。何か策は講じているの?」
「いろいろ調べているのですが、資金面で難しい部分も多くて……これは、私が歴代の男爵夫人が書き残していった資料です。参考になればよいのですが」
そう言って、ソフィアがずっと持っていた紙の束を差し出す。ジョンが小声で「お前、こんなものを見せてどうするんだ……!」と焦った様子だったが、メリッサは構わずソフィアから受け取った。
観察日記のようなもので、ケケ村の水やり表に比べてかなり緻密に記されており、別紙には新しいインクでコロンの木の特徴がまとめられていた。
普通、木の根は重力に従って水分が多い方向へと環境に応じた成長を見せるものだ。しかし、コロンの木は珍しくまっすぐ根付くことが多いという。完全に根を枯らすのであれば、本体を固定し、真上にゆっくりと引き抜けば、枝分かれした根も綺麗に取ることが可能だと記載されていた。
「なるほど、浮遊魔法でゆっくりと引き上げればいいのね。私に依頼したい内容というのは、コロンの木の撤去作業ってことかしら?」
「ええ……辺境伯家のご令嬢に大変失礼なお願いだと存じております。しかし、唯一浮遊魔法を使える者が持病の腰痛が悪化して動けないのです。かくいうクラム家の人間は浮遊魔法があまり得意ではなく……特にソフィアは魔力を持たない無能で、何の役にも立たず! 今の人員で作業しても、コロンの成長スピードに追い付けず、増えるばかりなのです」
卑屈な言葉を並べながら、ジョンが横目でじとっと睨む。ソフィアは申し訳なさそうに眉をひそめ、目をそらした。どうやらソフィアが魔力を持っていないことは事実のようだ。
「メリッサ様、どうかお力添えを。魔術師でなくとも、農作業に通じた者をお借りできませんでしょうか。果樹園と、今後の辺境伯領産の食材の発展のために!」
「――嫌よ」
涙ぐんで頭を下げる男爵夫妻に、メリッサは吐き捨てるようにして言う。
あまりにも冷たい言葉に、二人は顔を上げ、ひゅっと息を呑んだ。優しい顔で寄り添ってくれていたメリッサが怒っている表情を浮かべている。
「野菜の次は果物? まったく、住み心地改革とは名ばかりだわ。これじゃあ食糧保管のための改革じゃない! もっと早く言いなさいよ!」
スッとソファから立ち上がると、メリッサは扉のほうへつかつかと歩いていく。彼女の突然の行動に、二人は唖然としていた。
「め、メリッサ……様?」
「私が直接確認するわ。準備が整い次第、果樹園へ伺わせていただきたいのだけれど、都合のつく日はあるかしら?」
「それって、薬にもなると聞いたことはあるけれど……本当にそれだけ? コロンの実の成長は凄まじいものよ。自然から生み出されるものを人間が隠し通せるわけがないわ。学園でも商会でも、お茶会でも話題に上がるほど有名な話なのに……いつかばれると思わなかったのかしら」
「ええ、そこは我々も同じ意見でしたので、聞いてもらったんです。どうやら多く余ったら、国外不出のものを輸出入するためのカモフラージュに使うつもりだったと自供したそうで……あんなに大量にあっても、防腐の魔法付与ができなければ長期保存も難しいのに……」
がっくりと肩を落とすジョン。ソフィアも居た堪れないようで、膝に乗せた手をぎゅっと握った。これにはメリッサも大きな溜息を吐いた。
「私たちの不注意でこんな事になってしまい、本当に申し訳なく思っています。ですが、このままコロンの実が増え続ければ、いずれ果樹園は侵食されてしまいます。現に品種の近い林檎の木が数本、コロンの実の影響を受けて上手く実れていないのです」
「大ピンチじゃない! 果物の生命線だけでなく、果樹園の運営も影響が出てしまうわ。何か策は講じているの?」
「いろいろ調べているのですが、資金面で難しい部分も多くて……これは、私が歴代の男爵夫人が書き残していった資料です。参考になればよいのですが」
そう言って、ソフィアがずっと持っていた紙の束を差し出す。ジョンが小声で「お前、こんなものを見せてどうするんだ……!」と焦った様子だったが、メリッサは構わずソフィアから受け取った。
観察日記のようなもので、ケケ村の水やり表に比べてかなり緻密に記されており、別紙には新しいインクでコロンの木の特徴がまとめられていた。
普通、木の根は重力に従って水分が多い方向へと環境に応じた成長を見せるものだ。しかし、コロンの木は珍しくまっすぐ根付くことが多いという。完全に根を枯らすのであれば、本体を固定し、真上にゆっくりと引き抜けば、枝分かれした根も綺麗に取ることが可能だと記載されていた。
「なるほど、浮遊魔法でゆっくりと引き上げればいいのね。私に依頼したい内容というのは、コロンの木の撤去作業ってことかしら?」
「ええ……辺境伯家のご令嬢に大変失礼なお願いだと存じております。しかし、唯一浮遊魔法を使える者が持病の腰痛が悪化して動けないのです。かくいうクラム家の人間は浮遊魔法があまり得意ではなく……特にソフィアは魔力を持たない無能で、何の役にも立たず! 今の人員で作業しても、コロンの成長スピードに追い付けず、増えるばかりなのです」
卑屈な言葉を並べながら、ジョンが横目でじとっと睨む。ソフィアは申し訳なさそうに眉をひそめ、目をそらした。どうやらソフィアが魔力を持っていないことは事実のようだ。
「メリッサ様、どうかお力添えを。魔術師でなくとも、農作業に通じた者をお借りできませんでしょうか。果樹園と、今後の辺境伯領産の食材の発展のために!」
「――嫌よ」
涙ぐんで頭を下げる男爵夫妻に、メリッサは吐き捨てるようにして言う。
あまりにも冷たい言葉に、二人は顔を上げ、ひゅっと息を呑んだ。優しい顔で寄り添ってくれていたメリッサが怒っている表情を浮かべている。
「野菜の次は果物? まったく、住み心地改革とは名ばかりだわ。これじゃあ食糧保管のための改革じゃない! もっと早く言いなさいよ!」
スッとソファから立ち上がると、メリッサは扉のほうへつかつかと歩いていく。彼女の突然の行動に、二人は唖然としていた。
「め、メリッサ……様?」
「私が直接確認するわ。準備が整い次第、果樹園へ伺わせていただきたいのだけれど、都合のつく日はあるかしら?」