役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
 彼女なら力になってくれるはず――そう思い立ったら、行動は早かった。すぐに歴代の男爵夫人がまとめた資料をかき集め、半ば強引にリックを言い包めて辺境伯邸で面会を求める。メリッサに会えることを信じて。
 もし彼女が勇気を出すこともなく、リックに言われるがままだったら、きっとこの果樹園は近いうちに終わっていたかもしれない。

「この度は、身内が大変ご迷惑をおかけいたしました……ソフィアも、悪かったな」
「あなた……いいえ、私こそ止められなくてごめんなさい……!」

 男爵邸にある一番奥の部屋で、ベッドに横たわったジョンが苦し紛れに言うと、彼の手を取るソフィアが、目に涙を浮かべながら首を振った。医師の診断曰く、ジョンの腰痛は今までがむしゃらに働いていたツケがまわってきた結果だという。
 二人の様子を見て、メリッサはホッと胸をなでおろした。すると、別の指示をしていたクロードが部屋に入ってきた。

「メリッサ様、クラムの実はすべて荷台に詰め込みました。先行して騎士団たちが屋敷へ向けて出発しています。そしてリックですが、いかがいたしましょう」
「兄に成りすまして男爵家の当主の座を奪おうとした、れっきとした計画的犯行よ。事の次第では詐欺罪になるかもしれない。騎士団の取調を受けてもらいなさい」
「かしこまりました。……クラム男爵夫妻、よろしいですね。後日、お二人にもお話を伺いますので、そのつもりで」
「わ、わかりました」
「それと辺境伯家で待機しているジェナから、先程手紙が届いたと言伝を預かったのですが……」
「なんですって! それは大変、早く戻るわよ!」

 メリッサの表情がぱぁっと明るくなると、何の話かまったくわかっていないクロードの背中を押して急かす。

「め、メリッサ様! 危ないですって」
「それほど急いでいるのよ! それじゃあ、私たちは失礼するわね。……ああ、そうだ。ソフィア、三日後は空いているかしら?」
 病室を出ようとするメリッサが急に振り返る。ソフィアが特にない、と答えるとメリッサはにっこり笑った。
「良かった、お昼頃にクロードを迎えに行かせるから、屋敷へ来て頂戴。試作品を作るわよ!」
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