役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
――遡ること、三日前。
コロンの撤去作業の前にソフィアの提案を聞いたメリッサは、彼女の案をどうにかして使えないかと頭を巡らせた。
コロンの酸っぱさと渋み、青臭さは加熱で抜ける可能性があったが、コロン由来の甘みを引き出すことは難しかった。古書によれば、元々甘い果実だったのが、天敵が増え、年月を重ねていくうちに自身を守るために甘味を封じ込めたとされている。
引き出すためのきっかけとして甘味料を追加するのが早いのだが、砂糖や蜂蜜は非常に高価で、定期的に商品として作ることを見通すとコストが掛かりすぎてしまう。
そこでメリッサは、古書とアルフォンスからの手紙で知ったデーツを思い出した。
果物同士であれば、甘さに偏りなくまとめることもできるかもしれない。そう考えた次の瞬間には手紙をしたためるために動いていた。
相手はもちろん、異国の地を訪問しているアルフォンスだ。どうにかしてデーツの実や苗木を入手できないかと速達に特化した伝書鳥を送ったところ、想像していたよりも早く連絡がついた。
どうやらアルフォンスの興味を引いたらしい。送った数時間後には『デーツの実と種を入手した。明日、辺境伯領へ戻る』としたためられた走り書きが届いた。
手紙が届いた翌日、アルフォンスが辺境伯邸に訪れた。どうやら移動魔法を駆使してきたらしい。
「メリッサ嬢、君は人使いが荒いと言われたことはないか?」
「あら、私はデーツの実を輸入する都合をつけてほしい、としかお願いしておりませんが」
「『国が抱える問題を一気に解消できる』と書かれたら、協力しないわけがないだろう。ほら、約束の品だ」
背負うようにして持っていた麻袋には、乾燥したデーツが詰め込まれている。種のほうは実がなるまでに五年以上かかるそうだが、こちらは追々、改良を施していくつもりだ。なんせ辺境伯領は土地の魔力が豊富な領地。何十年かかるものが、たったの数年、数ヶ月で成長する事例も少なくはない。
メリッサは早速、デーツを厨房に持っていった。料理長とは事前に相談しており、収穫して運び込んでおいたコロンの実で試作は進められていたのだ。
致し方なしとメリッサのポケットマネーで蜂蜜を購入して使ってもらっていたが、蜂蜜特有の癖のある甘みが強すぎて、コロンの食感しか残らなかったようで困っていたらしい。
デーツを味見した料理長は「これは甘すぎる!」と目が飛び出るほど驚いていた。
「料理長、私も一緒に作ってもいいかしら? 提案した当事者として、作り方を説明できるようにしたいの」