役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
――時は遡り、二ヶ月前。
辺境伯家の執務室を出た先の廊下で、アルフォンスから招待状を手渡された時のことだ。
「メリッサ嬢宛に預かってきた。三ヶ月後の夜会にはぜひ参加して欲しいとのことだ。エスコートは、君さえよければ俺が引き受けよう。オルディンは王都にいる奥方と参加予定だからな」
「……正気ですか?」
王弟相手だというのに、あまりにも唐突なお誘いに動揺し、つい頭より先に口が動いてしまった。
「王妃陛下と対面だなんて、私には荷が重すぎます。叔父様だけで良いではありませんか?」
「陛下は君をご指名だ。それに住み心地改革の主導者は君なのだから、責任者として会えばいいだろう。大体、俺と話はできているじゃないか。何を緊張する?」
「アルフォンス殿下は別枠です。初対面があれでしたし……とにかく、夜会への参加は承ります。ですが、エスコートは丁重にお断りします!」
ただでさえ、未だに『貴族潰しの出戻り令嬢』と不名誉な二つ名が出回っているのだ。
メリッサ自身にノーダメージでも、王弟であるアルフォンスには少なからず風当たりが強くなる。そうなると、彼の仕事に支障が出ると思ったメリッサは、今までもなるべく二人きりになることは避けてきた。それが夜会のエスコートだけですべて水の泡となってしまう。
メリッサはそう告げて彼を見ると、珍しく目を見開いて固まっていた。そして今まで聞いたことのないほどか細い声で「そうか、わかった」と呟いて立ち去っていった。
その寂しげな後ろ姿は、今でも鮮明に思い出す。
「あれから変わらず手紙のやり取りはありますし、改革の件で来訪された時も対応も変わっていないのでおそらく怒らせていない、とは思っているのですが……どうなのでしょう……あんなにわかりにくい人、初めてです」
「まぁ、あのアルフォンスだからな。お前もお前だが……」
一応、詳細はオルディンにも伝えていた。彼は呆れたように苦笑いを浮かべ、「鈍感にも程があるなぁ」と一蹴されてしまったが、メリッサは首を傾げるばかりだ。
鏡越しのイザベラはどこか楽しそうな笑みを浮かべて続ける。
《夜会のエスコートはともかく、王妃様はメリッサちゃんに会いたいのは本当らしいのよ。だから日中のお茶会はどうかとご相談しておいたの。そろそろ招待状が届くはずだわ》
「もしかして、叔母様の方にお話が……?」
《フロランス公爵家の奥様とは気が合うのよ》
うふふ、と扇子で口元を隠しながら笑う。
亡き母しかり、オルディンの周囲の女性は皆気が強い者が揃っているらしい。ちらとオルディンの方を見ると、先程まで甘い笑みを浮かべていた彼は視線を泳がせていた。
辺境伯家の執務室を出た先の廊下で、アルフォンスから招待状を手渡された時のことだ。
「メリッサ嬢宛に預かってきた。三ヶ月後の夜会にはぜひ参加して欲しいとのことだ。エスコートは、君さえよければ俺が引き受けよう。オルディンは王都にいる奥方と参加予定だからな」
「……正気ですか?」
王弟相手だというのに、あまりにも唐突なお誘いに動揺し、つい頭より先に口が動いてしまった。
「王妃陛下と対面だなんて、私には荷が重すぎます。叔父様だけで良いではありませんか?」
「陛下は君をご指名だ。それに住み心地改革の主導者は君なのだから、責任者として会えばいいだろう。大体、俺と話はできているじゃないか。何を緊張する?」
「アルフォンス殿下は別枠です。初対面があれでしたし……とにかく、夜会への参加は承ります。ですが、エスコートは丁重にお断りします!」
ただでさえ、未だに『貴族潰しの出戻り令嬢』と不名誉な二つ名が出回っているのだ。
メリッサ自身にノーダメージでも、王弟であるアルフォンスには少なからず風当たりが強くなる。そうなると、彼の仕事に支障が出ると思ったメリッサは、今までもなるべく二人きりになることは避けてきた。それが夜会のエスコートだけですべて水の泡となってしまう。
メリッサはそう告げて彼を見ると、珍しく目を見開いて固まっていた。そして今まで聞いたことのないほどか細い声で「そうか、わかった」と呟いて立ち去っていった。
その寂しげな後ろ姿は、今でも鮮明に思い出す。
「あれから変わらず手紙のやり取りはありますし、改革の件で来訪された時も対応も変わっていないのでおそらく怒らせていない、とは思っているのですが……どうなのでしょう……あんなにわかりにくい人、初めてです」
「まぁ、あのアルフォンスだからな。お前もお前だが……」
一応、詳細はオルディンにも伝えていた。彼は呆れたように苦笑いを浮かべ、「鈍感にも程があるなぁ」と一蹴されてしまったが、メリッサは首を傾げるばかりだ。
鏡越しのイザベラはどこか楽しそうな笑みを浮かべて続ける。
《夜会のエスコートはともかく、王妃様はメリッサちゃんに会いたいのは本当らしいのよ。だから日中のお茶会はどうかとご相談しておいたの。そろそろ招待状が届くはずだわ》
「もしかして、叔母様の方にお話が……?」
《フロランス公爵家の奥様とは気が合うのよ》
うふふ、と扇子で口元を隠しながら笑う。
亡き母しかり、オルディンの周囲の女性は皆気が強い者が揃っているらしい。ちらとオルディンの方を見ると、先程まで甘い笑みを浮かべていた彼は視線を泳がせていた。