役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
突然、屋敷に繋がる扉が大きな音を立てて開かれ、見知らぬ令嬢が入ってきた。
薄桃色にフリルがふんだんに使われたドレスやツインテールの愛らしい装いとは裏腹に、ぷくぷくと太った体格に頬や額にはできものがあちこちに見受けられる。
誰もが首を傾げる中、ズカズカと入ってきたかと思えば、甲高い声でメリッサを罵倒し始めた。
「この女は、皆様から金を騙し取ろうとしている悪女なんですの! 私に夫を取られて追い出されるからって、腹いせに公爵家をめちゃくちゃにした『貴族潰しの出戻り令嬢』ですわ!」
言っていることが支離滅裂だ。だがふと、メリッサの脳裏に一人だけ思い当たる人物がいた。まさかと思い、恐る恐る問う。
「もしかして……ジェシカ嬢?」
「そうよ! マルコムがこの世で最も愛する者よ!」
彼女――改め、ジェシカが鼻息を荒くしながら高々に宣言すると、メリッサは頭を抱えた。
コモンズ家の新しい妻としてマルコムが迎え入れようとしていた、幼馴染であり愛人のジェシカ。以前はほっそりと小柄で小動物のような印象だったが、たった数ヶ月で肌荒れだけでなく、まるまると太った体型になってしまうとは。
(どんな生活したらそんなことになるのよ、とは口が裂けても言えない……っ!)
マルコムがジェシカへ貢いだ金額は、目が飛び出るほど高額だったこともあって、今でもはっきり覚えている。そのほとんどが人気店の菓子で、義両親の散財の倍を超える額を占めていた。
そもそも、コモンズ家は現在借金まみれで余裕はないはずだ。食事も衣類も、以前のような高価なものは手に入れにくい経済状況で、メリッサが出た後はもっと悪化しているはず。いくらジェシカの生家が公爵家だったとしても、この体型になるほどの食費を短期間で出せるとは到底思えなかった。
喉まで出かかった言葉をぐっと飲み込んで、メリッサは慎重に続けた。
「どうしてあなたがここに? リストにあなたのお名前は見かけなかったのですが……」
冷静を保たなければならない。興奮状態の彼女を抑えなければ、リコリスや令嬢たちに被害が及ぶ。
「私だって公爵夫人よ? 呼ばれているに決まっているじゃない。それに、あなたが来ることを知って、黙っているわけにはいかないわ。文句くらい言わせなさいよ!」
ジェシカはふん!と鼻で笑う。自身を「公爵夫人」と名乗ったということは、無事マルコムと結婚してコモンズ家に嫁いだということだろうか。正式な処分は領地の精査が終わってからと聞いているが、公爵からの降格は確定している。
「文句って、私にですか?」
「金貨よ。あなたが置いていった金貨が全部小石になっちゃったのよ! あなたのせいでしょ!? 義両親はやつれて床に伏せているし、お金を使うとマルコムは怒って最近素っ気ないし……あれもこれも、全部あなたが私の幸せを奪ったからよ。どう責任取ってくれるの!?」
唾を飛ばしながらああだこうだと告げるのは、すべてジェシカやコモンズ家の自業自得ばかり。それらをすべてメリッサに責任転嫁するには無理がある。
それは周囲の令嬢たちも同じように感じたようで、困惑する声も聞こえてきた。
薄桃色にフリルがふんだんに使われたドレスやツインテールの愛らしい装いとは裏腹に、ぷくぷくと太った体格に頬や額にはできものがあちこちに見受けられる。
誰もが首を傾げる中、ズカズカと入ってきたかと思えば、甲高い声でメリッサを罵倒し始めた。
「この女は、皆様から金を騙し取ろうとしている悪女なんですの! 私に夫を取られて追い出されるからって、腹いせに公爵家をめちゃくちゃにした『貴族潰しの出戻り令嬢』ですわ!」
言っていることが支離滅裂だ。だがふと、メリッサの脳裏に一人だけ思い当たる人物がいた。まさかと思い、恐る恐る問う。
「もしかして……ジェシカ嬢?」
「そうよ! マルコムがこの世で最も愛する者よ!」
彼女――改め、ジェシカが鼻息を荒くしながら高々に宣言すると、メリッサは頭を抱えた。
コモンズ家の新しい妻としてマルコムが迎え入れようとしていた、幼馴染であり愛人のジェシカ。以前はほっそりと小柄で小動物のような印象だったが、たった数ヶ月で肌荒れだけでなく、まるまると太った体型になってしまうとは。
(どんな生活したらそんなことになるのよ、とは口が裂けても言えない……っ!)
マルコムがジェシカへ貢いだ金額は、目が飛び出るほど高額だったこともあって、今でもはっきり覚えている。そのほとんどが人気店の菓子で、義両親の散財の倍を超える額を占めていた。
そもそも、コモンズ家は現在借金まみれで余裕はないはずだ。食事も衣類も、以前のような高価なものは手に入れにくい経済状況で、メリッサが出た後はもっと悪化しているはず。いくらジェシカの生家が公爵家だったとしても、この体型になるほどの食費を短期間で出せるとは到底思えなかった。
喉まで出かかった言葉をぐっと飲み込んで、メリッサは慎重に続けた。
「どうしてあなたがここに? リストにあなたのお名前は見かけなかったのですが……」
冷静を保たなければならない。興奮状態の彼女を抑えなければ、リコリスや令嬢たちに被害が及ぶ。
「私だって公爵夫人よ? 呼ばれているに決まっているじゃない。それに、あなたが来ることを知って、黙っているわけにはいかないわ。文句くらい言わせなさいよ!」
ジェシカはふん!と鼻で笑う。自身を「公爵夫人」と名乗ったということは、無事マルコムと結婚してコモンズ家に嫁いだということだろうか。正式な処分は領地の精査が終わってからと聞いているが、公爵からの降格は確定している。
「文句って、私にですか?」
「金貨よ。あなたが置いていった金貨が全部小石になっちゃったのよ! あなたのせいでしょ!? 義両親はやつれて床に伏せているし、お金を使うとマルコムは怒って最近素っ気ないし……あれもこれも、全部あなたが私の幸せを奪ったからよ。どう責任取ってくれるの!?」
唾を飛ばしながらああだこうだと告げるのは、すべてジェシカやコモンズ家の自業自得ばかり。それらをすべてメリッサに責任転嫁するには無理がある。
それは周囲の令嬢たちも同じように感じたようで、困惑する声も聞こえてきた。