役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
「メリッサ」

 一通り令嬢たちとの話を終えると、イザベラに呼ばれた。彼女から呼び捨てで呼ばれることはほとんどないのだが、この時はメリッサも気を引き締めた。

「ベラ叔母様、この度はご迷惑をおかけして申し訳ございません」
「そうね。この事態を招いたのは確かにあなたかもしれない。どうして悪女として振る舞ったの?」

 ジェシカに対するメリッサの振る舞いは、高飛車な悪女だった。もし煽るような言葉を口にしなければ、ティーナイフで刺されそうになることもなかったはずだ。
 メリッサは気まずいながらも言葉を選んで告げる。

「返す言葉もございません。ただ、皆さんを巻き込むよりかは、私がすべて彼女の気を引いた方が、回避できる確率が上がると思ったのです。彼女は本当に、コモンズ家の実態を知らないのだと思います。元夫は口車に乗せるのが上手でしたから。だから怒りの矛先が私にしか向けられない。……自分を公爵夫人だと名乗っている間は、特に」
「……無謀なことをしたのはわかっているのよね」
「はい。申し訳ございません」

 深く頭を下げると、上からはぁ、と大きなため息が聞こえてきた。イザベラの仕事は、辺境領をより活性化するための人脈作り。今回の一件で仕事に支障をきたしていてもおかしくはないのだ。
 ――しかし。

「本当に……怪我とかしたらどうするのよ! こんなに綺麗な肌に傷がつくなんて……考えただけでもショックよ!」
「……へ?」
「ナイフを取り上げた時は柄の方を掴んでいたから大丈夫よね? でも怖かったでしょう……ああ、しばらく仕事を休んでつきっきりで側にいたい……心のケアだって大切だもの。セカンドハウスに戻ったら極上のバスタイムを用意させるわ!」

 メリッサの想像とは裏腹に、イザベラは仕事のことなど今はどうでも良いようだ。唖然とするメリッサに、イザベラは目を細めて続ける。

「あなたはもう、ヴィンセント辺境伯家の娘なの。私やオルディンが悲しむような真似はしないで」
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