役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜

 その表情は心配の色を浮かべていた。彼女にとって、すでにメリッサは娘であり、家族――それを思い知った途端、自分の愚かな行動を悔いた。

「……ごめんなさい、ベラ叔母様」
「反省したなら良し! さて、私たちもセカンドハウスへ……」
「待って、メリッサ!」

 また引き止められたと思えば、今度はリコリスとフロランス夫人だった。この件については王妃であるリコリスがその場に居合わせたこともあり、王家にも報告が上がる事になっている。詳しい事情は先程説明したのだが、何か足りなかっただろうか。メリッサが口を開こうとすると、なぜかリコリスはメリッサの手を取って興奮気味に伝える。

「あなた、やっぱり最高ね! わたくしの目は間違いじゃなかった!」
「えっと……王妃陛下?」
「やっぱりわたくしの元で働かない? ちょうど女官長を探していたところなの。メリッサが欲しいわ!」
「リコリス!」

 勢いでまくしたてるリコリスを、フロランス夫人が言葉で制す。今日の数時間のお茶会の間で何度見かけたことだろう。しまった、と茶目っ気たっぷりで笑うリコリスを横目に、フロランス夫人はメリッサに言う。

「メリッサ嬢、今回の件は我が家の警備に問題があります。どうか気になさらないで」
「公爵夫人、ですが……」
「では、コロン・ポートが復活したらフロランス家の分を少し多くご用意いただける? あなたが気にしているコモンズ家が管理していた領地についても、夫に進言しておくわ」
「……よろしいのですか?」
「まぁ、私がどうこう言う前に、王妃(リコリス)が進めてしまいそうですけどね。悪い条件じゃないでしょう? なにより、私も甘いものが好きなのよ」
「またこっちに来たらお話しましょ、メリッサ。もちろん、女官長の話は本気だからね!」

 フロランス母娘の屈託のない笑みを見て、この日メリッサは自分が、人徳だけでなく環境も恵まれているのだと実感したのだった。
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