役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
 正直、五分五分だ。メリッサが告げた推察は、ただでさえ事実を並べただけのもの。コモンズ家にここまで考えられる人材がいるのであれば、きっとこのような状況にはなっていないだろう。
 しかし、決めつけるには情報が足りていない。商才に長け、知名度が上がっていた男爵家を巻き込む理由がわからない。
 それでも王宮での調査が終われば、どのみちコモンズの爵位は降格される。メリッサは黒幕まで踏み込むつもりはなかった。
 しかし、アルフォンスは違う。国のために動く王弟は、国家に歯向かう可能性があれば突き詰め、明らかにするのが仕事だ。

「なおさら夜会は危険だ。出入りは貴族だけではない。顔が割れているとはいえ、仮面をしてしまえば判断はつかない。使用人に化けている可能性だってある」
「ならば、せめて叔父様たちと行動……は、難しいかしら。最終手段として魔法は取っておくとして、何かあっても穏便に済ませられるようにいたしますわ」

 今回の夜会は国内の貴族だけではない。近隣諸国の来賓も参加するため、辺境伯領の主として夫婦揃っての挨拶回りは当然のこと。その間、メリッサも同行すればよいのだが、ずっとくっついているわけにもいかないだろう。
 特に今回はケケ村での不作問題やコロン・ポートの開発について問われる可能性が充分にある。オルディンから説明してもさほど問題はないのだが、王妃然り、注目度が高いこともあって、責任者のメリッサはいなければかえって不審がられてしまうだろう。

(『住み心地改革』の注目度が予想を遥かに超えたのは想定外だったわ。バックレられないのなら、せめて存在感を薄める魔法があればいいのに……!)

 魔導書をひっくり返せばそのような魔法も見つかるかもしれないが、夜会まで時間がない。
 すると、アルフォンスは立ち上がると、対面に座るメリッサの前に跪いた。

「一度は断られた身だが、失礼を承知で乞う。夜会への欠席が難しいのなら、なおさら俺にエスコートをさせて欲しい」
「……できません。私といれば殿下が――」
「『貴族潰しの出戻り令嬢』――俺は君と初めて会った時、そう言った。覚えているか?」

 ケケ村で対面した時のことだ。嫌味を込められた彼の声色は、控えていたジェナとクロードが反対しようとしてくれたのを宥めるのに必死だった。
 メリッサとしては、異名など気にしていなかった。実際、不正を暴いて一家の未来を握り潰したことも、離縁して叔父の家に転がり込んだことも事実。何を言われても仕方がないと割り切った。それは今でも変わらない。
 だから、言葉に詰まったのだ。アルフォンスが仄暗い表情で言ったから。

「あの日、君に嫌な思いをさせてしまったことをずっと後悔していた。褒め言葉にもならない肩書き(それ)を背負うには重すぎる。無傷でいられるはずがない」
「それ、は……」

 胸の内を見抜かれたようで、反射的に視線を逸らす。
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