役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
◇
「――っ、お嬢様大変です!」
夜会の準備を始めたセカンドハウスの一室では、ジェナが唐突に叫んだ。メリッサ自身も落ち着かない様子で、興奮気味のジェナに問う。
「これ、本当に大丈夫? 浮いていたりしない?」
「滅相もございません! お美しいです。というか、ご自身で選んだお色ではありませんか」
「そうだけど、夜会なんて久しぶりすぎて不安なのよ……!」
今日のメリッサは金髪の髪をシンプルなパールの髪飾りで結い上げ、フリルやレースがふんだんに使われたドレスはコバルトブルーでまとめている。
社交界への参加は初めてではないが、仕事に没頭しがちなメリッサにとってはほとんど無縁の場所だ。コモンズ家に嫁いだ頃はほぼ軟禁状態だったことから、普段は強気なメリッサもこればかりは心配が勝っている。
「ご心配なさらずとも、とても素敵ですよ。気になるのであればアルフォンス殿下にも見てもらいましょう!」
「……先回りして王宮に行こうかしら」
「それではエスコートの意味がないじゃないですか!」
そんな話をしていると、外に馬車が停まる音が聞こえた。窓からでもはっきりと目につく、王家の紋章が入っている豪華な馬車だ。
(め、目立つ……)
いや、王家の人間だから仕方がないことだろうが、まさかここまでとは思っていなかった。
そこへ、セカンドハウスの侍女がメリッサを呼びにやってきた。部屋を出て玄関口へ向かうと、そこには襟詰めのかっちりとした濃紺の正装に身を包んだアルフォンスが待っていた。
挨拶をする前に目が合い、お互いの顔を見合わせた。
アルフォンスの正装は濃紺の生地に金の刺繍がとても美しいが、その中でも際立ったのは金と赤の装飾だった。ルビーよりも柔らかい赤は、まるでメリッサの瞳の色に近い。メリッサのコバルトブルーのドレス然り、事前に相談したわけでもなく互いの色を入れ合っていることに驚きを隠せなかった。
しばらく沈黙が続いたが、どちらからともなくフッと笑みを浮かべた。
「ごきげんよう、アルフォンス殿下。私たち、気が合いますわね」
「奇遇だな、俺も同じことを考えていたよ」
アルフォンスの腕に引かれ、メリッサは王家の馬車に乗り込んだ。イザベラは遅れているオルディンの到着を待ってからの出発である。
そんなオルディンは今、辺境領の魔物討伐の真っ最中だ。
「サーラント王国から流れ込んだ魔物はそう多くはないが、なんせSランクが多いらしい。オルディンに無理はするなと伝えているが、最悪俺も途中で向かう可能性がある」
「……大丈夫です。叔父様ですもの」
メリッサもアルフォンスも、『軍神』と謳われるオルディンの実力は充分理解している。彼がいることで領民たちも冷静になり、避難誘導もスムーズに行えている。誰も巻き込ませない状況で、領民を第一に思う領主に敵はいない。
「そうだな。オルディンも『成すべきことを成せ』と言っていた。……覚悟はいいか? メリッサ」
初めて敬称なしで呼ばれて一瞬どきっとするが、メリッサは口元を緩め、余裕の笑みを浮かべた。
「ええ。私はメリッサ・ヴィンセント――本来の役目を全うするまでです!」
「――っ、お嬢様大変です!」
夜会の準備を始めたセカンドハウスの一室では、ジェナが唐突に叫んだ。メリッサ自身も落ち着かない様子で、興奮気味のジェナに問う。
「これ、本当に大丈夫? 浮いていたりしない?」
「滅相もございません! お美しいです。というか、ご自身で選んだお色ではありませんか」
「そうだけど、夜会なんて久しぶりすぎて不安なのよ……!」
今日のメリッサは金髪の髪をシンプルなパールの髪飾りで結い上げ、フリルやレースがふんだんに使われたドレスはコバルトブルーでまとめている。
社交界への参加は初めてではないが、仕事に没頭しがちなメリッサにとってはほとんど無縁の場所だ。コモンズ家に嫁いだ頃はほぼ軟禁状態だったことから、普段は強気なメリッサもこればかりは心配が勝っている。
「ご心配なさらずとも、とても素敵ですよ。気になるのであればアルフォンス殿下にも見てもらいましょう!」
「……先回りして王宮に行こうかしら」
「それではエスコートの意味がないじゃないですか!」
そんな話をしていると、外に馬車が停まる音が聞こえた。窓からでもはっきりと目につく、王家の紋章が入っている豪華な馬車だ。
(め、目立つ……)
いや、王家の人間だから仕方がないことだろうが、まさかここまでとは思っていなかった。
そこへ、セカンドハウスの侍女がメリッサを呼びにやってきた。部屋を出て玄関口へ向かうと、そこには襟詰めのかっちりとした濃紺の正装に身を包んだアルフォンスが待っていた。
挨拶をする前に目が合い、お互いの顔を見合わせた。
アルフォンスの正装は濃紺の生地に金の刺繍がとても美しいが、その中でも際立ったのは金と赤の装飾だった。ルビーよりも柔らかい赤は、まるでメリッサの瞳の色に近い。メリッサのコバルトブルーのドレス然り、事前に相談したわけでもなく互いの色を入れ合っていることに驚きを隠せなかった。
しばらく沈黙が続いたが、どちらからともなくフッと笑みを浮かべた。
「ごきげんよう、アルフォンス殿下。私たち、気が合いますわね」
「奇遇だな、俺も同じことを考えていたよ」
アルフォンスの腕に引かれ、メリッサは王家の馬車に乗り込んだ。イザベラは遅れているオルディンの到着を待ってからの出発である。
そんなオルディンは今、辺境領の魔物討伐の真っ最中だ。
「サーラント王国から流れ込んだ魔物はそう多くはないが、なんせSランクが多いらしい。オルディンに無理はするなと伝えているが、最悪俺も途中で向かう可能性がある」
「……大丈夫です。叔父様ですもの」
メリッサもアルフォンスも、『軍神』と謳われるオルディンの実力は充分理解している。彼がいることで領民たちも冷静になり、避難誘導もスムーズに行えている。誰も巻き込ませない状況で、領民を第一に思う領主に敵はいない。
「そうだな。オルディンも『成すべきことを成せ』と言っていた。……覚悟はいいか? メリッサ」
初めて敬称なしで呼ばれて一瞬どきっとするが、メリッサは口元を緩め、余裕の笑みを浮かべた。
「ええ。私はメリッサ・ヴィンセント――本来の役目を全うするまでです!」