役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
終章 役目はまだまだ終わらないようです
「――なんで、あなたが」

 存在はちらついていても、顔なんて記憶の彼方に遠のいていた。そんな元夫の顔がここまで鮮明に見えたのは、悪い夢でも見ているようだ。
 メリッサは驚くも、動揺を隠すために平然を装った。目の前にいるマルコムは、あの頃も派手な装いだった貴族服は型落ちしたものに変わっていて、以前のような高圧的な態度は一切感じられない。異性を惹きつける甘いマスクに浮かんだニタリと歪んだ口元は、ここまで気味が悪かっただろうか。

 彼だけならまだしも、メリッサを囲うように元義両親も揃って構えていた。ジェシカの話では二人とも床に伏せていると聞いていたが、確かに顔色は悪く、やせこけている。

(どちらにせよ、何か企んでいることは明白ね。逃げ道は……塞がれてしまったわ)

 強行突破もできなくはない。しかし、招待もされていない彼らがなぜ堂々と姿を見せたということは、何か良からぬことを考えているのではないか? そう思うと、ここで逃げるのは得策ではないかもしれない。

「メリッサ、ようやく見つけたぞ。辺境なんぞに閉じこもってばかりで、探すのに苦労した。よほど我々から逃げたかったようだな」
「何を仰っているのかわかりません。私は辺境領にずっといたのです。あなたがたが探すのに苦労したのではなく、辺境領の包囲網をくぐり抜けられなかったのではありませんか」

 端から端までひっきりなしに飛び回っていたこともあって領都からは度々離れていたものの、辺境領からは一切出ていない。タイミングの問題もあるだろうが、国内でもしっかりとした警備が敷かれている検問所で、入領許可が下りなかったのが一番の理由だろう。

「まぁいい。生意気な口を叩けるのもここまでだ!」
「メリッサさん、私たちはあなたを迎えに来たのよ」

 夫人の話に首を傾げる。迎えに来た? 何のために?

「メリッサ、君の活躍は僕たちの元まで届いていたよ。魔道具だけでなく特産品まで作ってしまうなんて、君は素晴らしい逸材だ! ――しかし、その才能を辺境に留めておくのは勿体ないと思わないかい?」
「そうだ、その技量はもっと良い土地で、良い環境で発揮されるべきだ! 公爵家にはそれができる。貴様をまた、マルコムの妻として迎え入れてやろう」
「……なんですって?」

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