役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
「ど、どうして……なんで辺境伯家の迎えが……?」
「ヴィンセント辺境伯は私の叔父です。ご存じだと思ったのですけれど……ああ、そういえば、ひいお祖父様の代から伏せるようにしておりましたわね。媚びる馬鹿が増えるからと」
「きっ……聞いてない、聞いてないよメリッサ! 夫婦なのに、どうしてこんなに大切なことを黙っていたんだい? 僕は君のことを愛していたというのにこんな仕打ち、あんまりだよ!」
「夫婦? ――都合のいいように使い捨て、愛人を優先したあなたに愛など欠片もありませんけど」
「えっ……」
「お望み通りに離縁して差し上げるのですから、これからどうぞ愛する人と、末永くお幸せに」
にこやかな笑みを浮かべながらも冷たく吐き捨てるメリッサの言葉に、マルコムは何も言えなくなってしまう。もはや言い返す気力もない。
「なぜだ……なぜ、黙っていた!? なぜ従っているフリをした!?」
公爵は愕然としながらも震える声で問う。
辺境伯家の後ろ盾があるのなら、メリッサはその場で助けを求めることも、公爵家を潰すことも容易くできたはずだ。関係性を伏せるように言われていたとはいえ、離縁という貴族令嬢にとっての痛手を負う必要はどこにもない。
しかし、彼女はそうしなかった。出戻りのレッテルを貼られるよりも、優先する何かがあった――それは何か?
メリッサは小さく笑みを浮かべ、公爵に告げる。
「見ておきたかったんです。辺境伯領がこれから治めていく場所を」
「は……?」
彼女の口から告げられたそれは、宣誓布告。辺境伯領の領主は、コモンズ家が所有する領地を狙っているという、意志の表れだった。
(馬鹿な、そのためにメリッサを送り込んだとでも言うのか……!?)
唖然とする公爵をよそに、メリッサは絶えず微笑む。この半年間の結婚生活が、すべて仕組まれたものだったと言いたげに。
「辺境伯様より『用が済んだら戻ってこい』とお達しがありましたので、こちらで失礼させていただきます」
「ふざけるな……何がこれから治めていく場所だ? 公爵である俺を散々コケにしやがって、ただで済むと思うなよ! すぐに地獄を見せて――!?」
怒号を遮ってメリッサは執事から受け取った扇子を素早く振り上げると、公爵の前に突きつけた。扇子の先が公爵の鼻先をかすめる。まるで剣を突きつけられたかのような気迫に、公爵は耐えきれず地面に座り込んだ。マルコムは恐怖で震え上がり、指先一つ動かすことすらかなわない。
「ヒィッ……!」
「『散々コケにしやがって』? それはこちらの台詞です」
もはや男女や身分差など関係ない。義家族全員で「地味で平凡な女」だと罵った彼女はもう、ここにはいなかった。
「私のことを無能だと罵りながら金を稼いだ割には詰めが甘いのでは? 馬鹿につける薬はありませんが、馬鹿にもわかるようにこれから教えて差し上げます。──どうぞ、覚悟なさいませ」
「ヴィンセント辺境伯は私の叔父です。ご存じだと思ったのですけれど……ああ、そういえば、ひいお祖父様の代から伏せるようにしておりましたわね。媚びる馬鹿が増えるからと」
「きっ……聞いてない、聞いてないよメリッサ! 夫婦なのに、どうしてこんなに大切なことを黙っていたんだい? 僕は君のことを愛していたというのにこんな仕打ち、あんまりだよ!」
「夫婦? ――都合のいいように使い捨て、愛人を優先したあなたに愛など欠片もありませんけど」
「えっ……」
「お望み通りに離縁して差し上げるのですから、これからどうぞ愛する人と、末永くお幸せに」
にこやかな笑みを浮かべながらも冷たく吐き捨てるメリッサの言葉に、マルコムは何も言えなくなってしまう。もはや言い返す気力もない。
「なぜだ……なぜ、黙っていた!? なぜ従っているフリをした!?」
公爵は愕然としながらも震える声で問う。
辺境伯家の後ろ盾があるのなら、メリッサはその場で助けを求めることも、公爵家を潰すことも容易くできたはずだ。関係性を伏せるように言われていたとはいえ、離縁という貴族令嬢にとっての痛手を負う必要はどこにもない。
しかし、彼女はそうしなかった。出戻りのレッテルを貼られるよりも、優先する何かがあった――それは何か?
メリッサは小さく笑みを浮かべ、公爵に告げる。
「見ておきたかったんです。辺境伯領がこれから治めていく場所を」
「は……?」
彼女の口から告げられたそれは、宣誓布告。辺境伯領の領主は、コモンズ家が所有する領地を狙っているという、意志の表れだった。
(馬鹿な、そのためにメリッサを送り込んだとでも言うのか……!?)
唖然とする公爵をよそに、メリッサは絶えず微笑む。この半年間の結婚生活が、すべて仕組まれたものだったと言いたげに。
「辺境伯様より『用が済んだら戻ってこい』とお達しがありましたので、こちらで失礼させていただきます」
「ふざけるな……何がこれから治めていく場所だ? 公爵である俺を散々コケにしやがって、ただで済むと思うなよ! すぐに地獄を見せて――!?」
怒号を遮ってメリッサは執事から受け取った扇子を素早く振り上げると、公爵の前に突きつけた。扇子の先が公爵の鼻先をかすめる。まるで剣を突きつけられたかのような気迫に、公爵は耐えきれず地面に座り込んだ。マルコムは恐怖で震え上がり、指先一つ動かすことすらかなわない。
「ヒィッ……!」
「『散々コケにしやがって』? それはこちらの台詞です」
もはや男女や身分差など関係ない。義家族全員で「地味で平凡な女」だと罵った彼女はもう、ここにはいなかった。
「私のことを無能だと罵りながら金を稼いだ割には詰めが甘いのでは? 馬鹿につける薬はありませんが、馬鹿にもわかるようにこれから教えて差し上げます。──どうぞ、覚悟なさいませ」