役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
メリッサが辺境伯家の馬車で立ち去ってしばらく経つが、公爵とマルコムはその場から動くことができずにいた。
「父上……メリッサの家の借金は、本当に嘘だったのですか……?」
マルコムは呆然と遠くを見つめる父に問いかける。彼がクレイソン男爵家の内情をいろんな手を使って調べていたのは、ともに調査資料に目を通していたマルコムもわかっている。
しかし、ヴィンセント辺境伯と親戚関係にあるという情報は、どこを調べても一切出てこなかった。公爵領を治める者として、情報収集が不十分だったとは思っていない。辺境伯家が一枚上手だったということだ。
「そんな馬鹿な……クレイソン男爵家は当主不在で、後継者がいなければすぐに爵位を返上しなければならない状況で……だから娘を囲い込むことで商会の流通を支配するはずだった、すべてはあのお方の目的のため……まさか、辺境伯が絡んでくるとは……」
「あのお方……?」
「いや、それより今は借金だ。あの娘は大量の金貨を置いていった。我が家の借金はしばらくこれでなんとか――」
公爵がブツブツと呟きながら、自身の行いを正しいものだと言い聞かせていた。まるで壊れしまった蓄音機のようだ。
その様子を目の当たりにして、マルコムはなぜか胸の奥がざわつくのを感じた。去り際にメリッサが告げた「これから」という言葉がやけに引っかかっているのだ。彼女がまだ何か企んでいるのではないか――もやつく頭を振り払おうとした、その瞬間。
「きゃあああ!」
突然、屋敷の中から悲鳴が聞こえてきた。マルコムは父を置いて駆け出し、声のするほうへ向かった。
先程までいた応接の間に人だかりができており、中からジェシカの狂った悲鳴が聞こえてくる。愛しい彼女に何かあってはたまらない。
「ちょっと、どいてくれ! ジェシカ、母上、何が……え?」
人混みをかき分けて中に入ると、マルコムは目の前に広がった光景に言葉を失った。
ローテーブルに置かれていたはずの金貨一千万枚――目も眩むほど輝いていたそれらは一瞬にして、ただの石に成り果てていた。
「父上……メリッサの家の借金は、本当に嘘だったのですか……?」
マルコムは呆然と遠くを見つめる父に問いかける。彼がクレイソン男爵家の内情をいろんな手を使って調べていたのは、ともに調査資料に目を通していたマルコムもわかっている。
しかし、ヴィンセント辺境伯と親戚関係にあるという情報は、どこを調べても一切出てこなかった。公爵領を治める者として、情報収集が不十分だったとは思っていない。辺境伯家が一枚上手だったということだ。
「そんな馬鹿な……クレイソン男爵家は当主不在で、後継者がいなければすぐに爵位を返上しなければならない状況で……だから娘を囲い込むことで商会の流通を支配するはずだった、すべてはあのお方の目的のため……まさか、辺境伯が絡んでくるとは……」
「あのお方……?」
「いや、それより今は借金だ。あの娘は大量の金貨を置いていった。我が家の借金はしばらくこれでなんとか――」
公爵がブツブツと呟きながら、自身の行いを正しいものだと言い聞かせていた。まるで壊れしまった蓄音機のようだ。
その様子を目の当たりにして、マルコムはなぜか胸の奥がざわつくのを感じた。去り際にメリッサが告げた「これから」という言葉がやけに引っかかっているのだ。彼女がまだ何か企んでいるのではないか――もやつく頭を振り払おうとした、その瞬間。
「きゃあああ!」
突然、屋敷の中から悲鳴が聞こえてきた。マルコムは父を置いて駆け出し、声のするほうへ向かった。
先程までいた応接の間に人だかりができており、中からジェシカの狂った悲鳴が聞こえてくる。愛しい彼女に何かあってはたまらない。
「ちょっと、どいてくれ! ジェシカ、母上、何が……え?」
人混みをかき分けて中に入ると、マルコムは目の前に広がった光景に言葉を失った。
ローテーブルに置かれていたはずの金貨一千万枚――目も眩むほど輝いていたそれらは一瞬にして、ただの石に成り果てていた。