役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
「そもそも、この私が弱々しく振る舞うと本気で思っていまして?」
「思わないが、せめて合図は座る前にしてくれ。せっかくのドレスが台無しになるぞ」
「あら、私は泥にまみれても構いませんけど。……それにしても残念ですわ。あなたたちは半年前から何も変わっていない。本気で辺境領を奪いたいのなら、もっと手を回さなくちゃ」
メリッサはアルフォンスとともに、してやったりと笑みを浮かべる。絶望の色を浮かべていたはずの表情は幻だったのかと思うほど平然としていた。
「め、メリッサ……また僕らを騙したのか!」
「半年前も今回も、先に騙したのはそちらではありませんか。倍にしてお返しさせていただいた、それだけのことです」
「ケケ村の不作も、コロンの実のことも全部、辺境領に魔物を襲わせる準備だったことは王宮の調査隊によって判明している。言い逃れはさせない」
川の水が村に満足に流れてこないことが原因で、畑が干からびた状態になっていたケケ村。近くの山に入ったアルフォンスらが水路を元通りにするため、魔法陣を書き換えたが、なぜそんな細工がされていたのかが問題だった。
コモンズの微妙な茶番劇の材料にするにはやることが大胆すぎる。
その時、メリッサはふと思い立った。
(もし、村に唯一派遣されていた近衛兵の役割が、人を山に近づけさせないことだったとしたら――?)
すぐにアルフォンスとオルディンに相談し、クロードをはじめ信頼のおける騎士団員を少人数体制で組ませ、山林を徹底的に調べさせた。コモンズ以外にも黒幕がいる可能性を加味し、悟られないためにもメリッサはあえて『住み心地改革』に取り組んでいることを表立ってアピールし続けた。
数ヶ月と時間をかけて隅々まで調べ上げた結果、魔法陣での細工は水路だけだったが、ケケ村の山を挟んだ向こう側には、サーラント王国の深い森と繋がっている。そこでようやく、魔物たちを錯乱状態にしやすくなる薬が散布されていることがわかったのだ。
「本当、厄介なことをしでかしてくれた。一歩間違えば国を滅ぼしかねない事態になっていた、その自覚はあるのか?」
オルディンの言葉に、公爵は悔しそうに歯ぎしりをした。例えここで言い返しても己の未熟さを公の場に晒すことになる。それは自身のプライドが許さないだろう。
「辺境領の被害はゼロではない。山の木々はなぎ倒され、せっかく見つけた鉱山の入口は崩されて……復興にどれほどの資金がかかるか、領を治める者であれば検討がつくはずだが……クロード」
「はい、森林復興と鉱山の修復工事……一部村に被害を受けていますので、その復興費もかかります。ざっと計算しますと、公爵領の昨年の収入額と同じですね。すべて請求いたしますので、そのつもりで」
「……ちょ、ちょっと待て! なぜだ、なぜそれだけで済んでいるんだ!?」
思わずマルコムが口を挟む。三〇〇近い魔物が押し寄せたはずだ。いくら辺境地の空き地が多いとはいえ、被害がそれだけで済むとは到底思えない。
「思わないが、せめて合図は座る前にしてくれ。せっかくのドレスが台無しになるぞ」
「あら、私は泥にまみれても構いませんけど。……それにしても残念ですわ。あなたたちは半年前から何も変わっていない。本気で辺境領を奪いたいのなら、もっと手を回さなくちゃ」
メリッサはアルフォンスとともに、してやったりと笑みを浮かべる。絶望の色を浮かべていたはずの表情は幻だったのかと思うほど平然としていた。
「め、メリッサ……また僕らを騙したのか!」
「半年前も今回も、先に騙したのはそちらではありませんか。倍にしてお返しさせていただいた、それだけのことです」
「ケケ村の不作も、コロンの実のことも全部、辺境領に魔物を襲わせる準備だったことは王宮の調査隊によって判明している。言い逃れはさせない」
川の水が村に満足に流れてこないことが原因で、畑が干からびた状態になっていたケケ村。近くの山に入ったアルフォンスらが水路を元通りにするため、魔法陣を書き換えたが、なぜそんな細工がされていたのかが問題だった。
コモンズの微妙な茶番劇の材料にするにはやることが大胆すぎる。
その時、メリッサはふと思い立った。
(もし、村に唯一派遣されていた近衛兵の役割が、人を山に近づけさせないことだったとしたら――?)
すぐにアルフォンスとオルディンに相談し、クロードをはじめ信頼のおける騎士団員を少人数体制で組ませ、山林を徹底的に調べさせた。コモンズ以外にも黒幕がいる可能性を加味し、悟られないためにもメリッサはあえて『住み心地改革』に取り組んでいることを表立ってアピールし続けた。
数ヶ月と時間をかけて隅々まで調べ上げた結果、魔法陣での細工は水路だけだったが、ケケ村の山を挟んだ向こう側には、サーラント王国の深い森と繋がっている。そこでようやく、魔物たちを錯乱状態にしやすくなる薬が散布されていることがわかったのだ。
「本当、厄介なことをしでかしてくれた。一歩間違えば国を滅ぼしかねない事態になっていた、その自覚はあるのか?」
オルディンの言葉に、公爵は悔しそうに歯ぎしりをした。例えここで言い返しても己の未熟さを公の場に晒すことになる。それは自身のプライドが許さないだろう。
「辺境領の被害はゼロではない。山の木々はなぎ倒され、せっかく見つけた鉱山の入口は崩されて……復興にどれほどの資金がかかるか、領を治める者であれば検討がつくはずだが……クロード」
「はい、森林復興と鉱山の修復工事……一部村に被害を受けていますので、その復興費もかかります。ざっと計算しますと、公爵領の昨年の収入額と同じですね。すべて請求いたしますので、そのつもりで」
「……ちょ、ちょっと待て! なぜだ、なぜそれだけで済んでいるんだ!?」
思わずマルコムが口を挟む。三〇〇近い魔物が押し寄せたはずだ。いくら辺境地の空き地が多いとはいえ、被害がそれだけで済むとは到底思えない。