役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
「錯乱した魔物は人も建物も、敵も味方も関係なく襲う。そんな奴らが、魔法が使えない辺境の民の集まりが最小限の被害に留めるなんてできるわけがない!」
「ちょっとばかり魔法に助けてもらったんだ。――メリッサと、土地の魔力のおかげだな」
にやりとオルディンが口元を緩める。その表情で、国王は「なるほど」と舌を巻いた。
「我が国の中でも辺境領は、土地の魔力が強く人と反応しやすい土地だとされている。要は、環境さえ整えば強い味方。王都がその力を発揮しきれないのは、土地の魔力と通ずる者が現れていないからだ」
「それって……まさか!」
「生まれつき膨大な魔力を持つメリッサは、辺境領の魔力とよく馴染んだのだろう。もちろん、彼女の手腕があってこその魔力の保持だ」
国王の言葉に、周囲がいっそうざわついた。『住み心地改革』を進めるうえで、メリッサの知識と手腕は充分に発揮されていた。彼女によって解決した事案のその後は大きな変化やトラブルに発展することなく、高い品質を保っている。クラム果樹園のコロンの木も、意図的に残した数本から新しい木は育っていない。
メリッサは「私の手腕なんて」と謙遜する。
「山林の調査結果を知って、魔物が辺境領に流れ込んでくる可能性を考えた私は、国境に踏み込んだ魔物たちに負荷がかかる重力魔法を仕掛けました。領主様の書庫で見つけた魔導書から拝借しましたが、これがまた難しくて。でも、常時発動できるものじゃないんです。だから私は賭けました。重力魔法を魔法陣で展開させて、それを気付かれないよう、結界魔法を上書きした。……つまり、魔物が入ってきた瞬間に重力魔法を発動させたのは、土地の魔力による拒否反応なんです。上手くいってよかったわ」
重力魔法が発動されると、魔物の身体には重力によって押し潰されるような感覚に陥り、動きを制限することができる。辺境騎士団はそれを狙って、一斉に倒していったのだ。
大胆な方法に、公爵は唖然とした。
「馬鹿な……土地が、意志を持って魔法を使うなんて!」
「それほどまでに、土地の魔力は辺境領がお好きなのですよ。私利私欲のために人を使うあなたたちとは大違いね」
その言葉に、公爵はその場に膝をつき、力なくうつむいた。
民に負担ばかりを負わせて領主ばかりが欲を満たす公爵領と、民のために動き、守る辺境領―――いくら土地の環境が整っていても、神から与えられた魔力はよく人を見ているようだ。
「――ここまで、長かったわ」
髪を揺らし、ゆっくりとマルコムたちの前に歩み寄ってくるメリッサはずいぶん楽しそうだ。
「魔法陣が発動しない可能性も考え、念のため魔物が領地に入ったことを感知する魔道センサーの設置、コロンの実が成る木から抽出したエキスで虫除けならぬ魔物除けスプレーを作り。騎士団の配置は無理のないシフトを組んで……短時間ですべて仕込んでから王都に来るのは、さすがの私も骨が折れましたわ! ……でも、それも今日で終わり」
「や、やめろ、やめてくれ……!」
貴族に似つかわしくない、怯えた表情のマルコムはかすれた声で懇願する。だが、彼女が止まるわけがない。
「今までご苦労さま、コモンズ公爵家の皆さん。これに懲りたら悪さはしないことね」
メリッサはいつになく美しく、不敵の笑みを浮かべて告げる。
この日、彼らは後悔した。とてつもなく規格外な令嬢を敵に回してしまったことに――。
「ちょっとばかり魔法に助けてもらったんだ。――メリッサと、土地の魔力のおかげだな」
にやりとオルディンが口元を緩める。その表情で、国王は「なるほど」と舌を巻いた。
「我が国の中でも辺境領は、土地の魔力が強く人と反応しやすい土地だとされている。要は、環境さえ整えば強い味方。王都がその力を発揮しきれないのは、土地の魔力と通ずる者が現れていないからだ」
「それって……まさか!」
「生まれつき膨大な魔力を持つメリッサは、辺境領の魔力とよく馴染んだのだろう。もちろん、彼女の手腕があってこその魔力の保持だ」
国王の言葉に、周囲がいっそうざわついた。『住み心地改革』を進めるうえで、メリッサの知識と手腕は充分に発揮されていた。彼女によって解決した事案のその後は大きな変化やトラブルに発展することなく、高い品質を保っている。クラム果樹園のコロンの木も、意図的に残した数本から新しい木は育っていない。
メリッサは「私の手腕なんて」と謙遜する。
「山林の調査結果を知って、魔物が辺境領に流れ込んでくる可能性を考えた私は、国境に踏み込んだ魔物たちに負荷がかかる重力魔法を仕掛けました。領主様の書庫で見つけた魔導書から拝借しましたが、これがまた難しくて。でも、常時発動できるものじゃないんです。だから私は賭けました。重力魔法を魔法陣で展開させて、それを気付かれないよう、結界魔法を上書きした。……つまり、魔物が入ってきた瞬間に重力魔法を発動させたのは、土地の魔力による拒否反応なんです。上手くいってよかったわ」
重力魔法が発動されると、魔物の身体には重力によって押し潰されるような感覚に陥り、動きを制限することができる。辺境騎士団はそれを狙って、一斉に倒していったのだ。
大胆な方法に、公爵は唖然とした。
「馬鹿な……土地が、意志を持って魔法を使うなんて!」
「それほどまでに、土地の魔力は辺境領がお好きなのですよ。私利私欲のために人を使うあなたたちとは大違いね」
その言葉に、公爵はその場に膝をつき、力なくうつむいた。
民に負担ばかりを負わせて領主ばかりが欲を満たす公爵領と、民のために動き、守る辺境領―――いくら土地の環境が整っていても、神から与えられた魔力はよく人を見ているようだ。
「――ここまで、長かったわ」
髪を揺らし、ゆっくりとマルコムたちの前に歩み寄ってくるメリッサはずいぶん楽しそうだ。
「魔法陣が発動しない可能性も考え、念のため魔物が領地に入ったことを感知する魔道センサーの設置、コロンの実が成る木から抽出したエキスで虫除けならぬ魔物除けスプレーを作り。騎士団の配置は無理のないシフトを組んで……短時間ですべて仕込んでから王都に来るのは、さすがの私も骨が折れましたわ! ……でも、それも今日で終わり」
「や、やめろ、やめてくれ……!」
貴族に似つかわしくない、怯えた表情のマルコムはかすれた声で懇願する。だが、彼女が止まるわけがない。
「今までご苦労さま、コモンズ公爵家の皆さん。これに懲りたら悪さはしないことね」
メリッサはいつになく美しく、不敵の笑みを浮かべて告げる。
この日、彼らは後悔した。とてつもなく規格外な令嬢を敵に回してしまったことに――。