役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
 本名を言い当てられ、降参と両手を挙げたカインは、メリッサに向き直った。丸眼鏡を外して胸ポケットにしまうと、琥珀色の瞳が再び目を開くと金色に変わっていた。それはサーラント家の血筋に見られる特徴の一つだ。
 カインは普段と同じ笑みを浮かべて続ける。

「僕は兄弟の中でも自由にさせてもらっている身でね、留学の名目でこちらにお世話になっているんだ。といっても、知っているのは王家の関係者くらい。文官として紛れていたのは、祖国で起きた悪質ポーションの売買ルートを調べていたからだよ」

 数年前、サーラント王国内にある商会ギルドを通じて質の悪い回復ポーションが大量に出回り、冒険者たちの仕事に大打撃を受ける一件が広まった。国王の直々の命で調べ始めたところ、そのポーション工場がコモンズ領の一角にあることを知った。」

「それから僕は、コモンズ家の悪事を片っ端から調べ上げたんだ。領地の評判は最悪なのに、公爵の権力と悪知恵に見逃されていた。どうやら彼、重鎮の誰かのコネを使って隠蔽していたらしいんだよね。裏でアルフォンス(・・・・・・)が動いていたけれど、誰も傷つけずに慎重に探る姿がもうじれったくて! そんな時に、君と出会ったんだ」

 まだクレイトン男爵夫妻の後ろにくっついて仕事を覚えようとしていた頃、偶然出会ったメリッサに目をつけた。
 膨大な魔力を秘め、両親の才能を引き継いだ才媛――魔法や魔道具の発展が近隣諸国に遅れをとっているサーラント王国には喉から手が出るほど欲しい人材だった。

「コモンズの行動は目に余る。メリッサ、商会で話している時から君は曲がったことが許せない人だとわかっていた。だから君をコモンズに接触させたら、きっと悪事を暴いてくれると思ったんだ」

 カインは隣国からの使者であることをコモンズ家に伝え、同時に借金についても言及した。そこで、メリッサの存在を告げ、クレイトン夫妻の死をきっかけに押しかけることを提案したのだ。
 結果、カインの思惑通りに彼らはメリッサを半ば強引に嫁がせ、稼がせた。その一方で、メリッサはコモンズ家の不正のほとんどを明らかにしただけでなく、母方の生家である辺境伯家を味方につけて、王宮が大っぴらに監査に入れるよう、入口を広げることに成功した。
 これにはカインも歓喜した。自分の見込んだ相手が逸材だったのだから。

「領のために尽くさない、国の役にも立たない。そんな奴に存在価値はあると思う? でしゃばりな無能は、エシャール王国の成長を低迷させるだろう。僕に感謝してほしいくらいさ。君だって、そう思ったから還付なきまでに叩き落としたんだろう?」
「……確かに、コモンズ家のやり方は非道だったわ」
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