役目は終えましたので、好きにしてもいいですよね?〜地味才女の楽しい改革劇〜
 ◇

 ――夜会の騒動から一ヶ月の月日が流れると、冬の寒さは一向に厳しくなった。

 辺境伯家の屋敷から雪景色を楽しみにしていたメリッサは、コロン・ポートで作ったジャムを温かい紅茶に入れたジャムティーを片手に、王宮からの報告を持ってやってきたアルフォンスと対面していた。他国へ視察に行く際に着用しているローブと、濃紺でまとめた騎士服姿はすっかり見慣れたものだ。

「それで、報告というのは?」
「コモンズの不正事実がすべて明らかになり、正式に処罰がくだされた。もうすぐ国内内に掲示されることだろう」

 夜会を騒がせたコモンズ一家は、すぐにアルフォンスの指示で近くに控えていた騎士たちによって拘束され、王宮から正式に国外追放を言い渡された。
 彼らの処分はすでに決まってはいたが、魔物を利用して辺境領を襲撃する計画を企て、実行した罪も加算されたため、爵位は降格ではなく剥奪。遠方の北国の領地で、肉体労働と針仕事に追われる日々を送ることになる。

「他国に被害はなかったとはいえ、一歩間違えれば要人たちを危険に遭わせていた可能性もありましたからね……その後、何か訴えられたとかは?」
「なかった。これも、兄上がすぐに和解させたのが布石になっていたのかもしれない」

 その日の夜会はお開きになるかと思われたが、国王は続行を決断。そしてすぐに他国の主賓に今回隠していたことの説明と、辺境領の武力と魔導書について、オルディンを携えて談笑に交じり始めたのだ。それが功を生じたのか、エシャール王国を批判する者は誰もいなかった。

「もしかして、陛下は先見の明をお持ちなのですか?」
「さぁな。生まれもっての才能なのか、もしくは努力の賜物なのか。弟と位置づけられてはいるが、昔から読めないんだ、あの人は」

 アルフォンスが困ったように小さく笑ったのを見て、メリッサは先代の国王――つまり、アルフォンスたちの父が明言していた『知は兄、武は弟』という言葉を思い出した。
 今回の魔物襲来の動向は、常に国王にも報告されていた。もしかしたら国王は、オルディンが完全討伐をすることを先読みしてこの夜会を設定し、決行したのかもしれない。
 突発なアクシデントの回収は、時に最高のパフォーマンスになる。穏やかな表情で談笑する彼に付き添っていたオルディンも、内心ハラハラしていたに違いない。
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