純情*ライアー
(傘……は、もういらないか。)
傷付けちゃったし。
いつのまにか下を向いていた顔を前に向けた時、葵くんがこっちを見た。
「あのさ!」
あれ、なぜか凛々しい顔。
必死さが消えてないあたり、クズなチャラ男には到底見えないけど。
「……何?」
その表情で何を言うのかと、ちょっと期待して見つめてみる。
「傘!貸してくれない!?」
…………。
なんかガッカリ。そんなこと?
というか、物の貸し借りにすらそんなに勇気使うの?
「……あぁ、いいよ?ちょっと待ってね……」
すっかり脱力してげんなりしながら鞄を開ける。
乾いた笑いまで漏れてしまった。
「そうじゃなくて、そっち!」
(……どっちよ?)
ムッとして視線を上げれば、震える人差し指が広げたまま置いておいたビニール傘に向いている。
口を結んで顔が赤い。
勇気を振り絞ってる顔。
「それに、一緒に入れて欲しいんだけど。」
――なんですと?