純情*ライアー

◆◇◆

長年愛用のビニール傘は撥水性を失って、受けた雨をそのまま落とす。


ぱしゃんと濡れた道路を踏む音が、雨の中に吸い込まれていく。


最寄り駅までの十数分。

私は手ぶら。傘は葵くんの手の中に。


大きくもない傘だから、歩く度肩がトントンぶつかる。


「濡れてるよ。葵くん。」


私は少しも濡れてないのに。


「いーの、俺が借りてるんだし。」


チラリとこっちを見てさらっと。


「今の女たらしのクズっぽかったよ。一丁前に。」

「狙ってないし!しかも一言余計じゃない!?」


ギャン、とすぐポーカーフェイスを崩す。

まだまだだね。葵くん。


< 37 / 115 >

この作品をシェア

pagetop