純情*ライアー
◆◇◆
長年愛用のビニール傘は撥水性を失って、受けた雨をそのまま落とす。
ぱしゃんと濡れた道路を踏む音が、雨の中に吸い込まれていく。
最寄り駅までの十数分。
私は手ぶら。傘は葵くんの手の中に。
大きくもない傘だから、歩く度肩がトントンぶつかる。
「濡れてるよ。葵くん。」
私は少しも濡れてないのに。
「いーの、俺が借りてるんだし。」
チラリとこっちを見てさらっと。
「今の女たらしのクズっぽかったよ。一丁前に。」
「狙ってないし!しかも一言余計じゃない!?」
ギャン、とすぐポーカーフェイスを崩す。
まだまだだね。葵くん。