ぼろきれマイアと滅妖の聖騎士

第三話 わたしを呼ぶときは


 右手の山稜から太陽が顔を出した。
 約束の時刻だ。
 レヴィンは馬を進ませながら周囲のすべてに意識を集中する。

 と、遠くにひとつの影が見えた。
 草原のずっと奥、丘の上。
 橙色の光に埋められたそこに、なにかが動いている。

 馬を進ませながら目を細めていると、やがて形をはっきりと捉えられるようになった。人の形をした、なにか。
 丘の向こう側から上ってきて、頂に立った。影はひとつだった。

 「……実体化、か。ひとりということはないだろうな」

 レヴィンは冷笑するように独り言ちた。
 が、いつまで待っても、影はひとつのままだった。

 「……複数の妖魔がひとつの身体を形成している? 狙いはなんだ。力を集中するためか……まあ、どうでもよい」

 彼は生贄としてやってきた。抗うつもりはないのだ。
 馬が歩む。影が徐々に大きくなる。
 と、影が上に伸びた。手を差し上げたように見える。
 レヴィンは瞬時、手綱を引き絞った。右手を浮かせ、腰の剣に軽く被せる。遠距離攻撃をされると考えたのだ。
 しかし、攻撃が降ってくることはなかった。

 影はまた小さくなり、なにやら動いている。
 と、その動きが止まり、さらに縦方向に小さくなった。今度はレヴィンは様子を見ている。影はしばらくそうしていたが、すぐに元の大きさに戻った。
 それは彼から見ると、まるでこちらに頭を下げているように見えた。

 「ふん。得体の知れぬ奴らめ。なにを企んでいる」


 ◇◇◇

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