魔法☆乙女(マジカルメイデン) ~九尾のキツネと五百年の約束~
第15話 妖狐退治!
巨大な妖狐と化したクウミさんが、上空からあたしたちをにらみつけた。
「これでやっとスタートラインでありんす。かかっておいで、ヒヨッコども!」
言うや否や、右手を高く上げた。
瞬時に空が真っ赤に燃える。
言葉を失うあたしたちに向かって、クウミさんは勢いよく右手を振り下ろした。
あたしたちに向けて空からとんでもない数の火の玉が降り注ぐ。
「法具顕現、光の盾」
あたしの左手に光の盾が現れた。
だがなぜか、どことなく鍋ぶたのような形をしている。
しょーがないじゃん、慌ててたんだから!
間髪入れず、構えた鍋ぶたに火の玉が当たる。
ガガン!
「ぐっ!!」
当たった瞬間、すさまじい衝撃とともにあたしの身体がズズっと大きく後ろに下がった。
重い。手が痺れる。しっかり防いだはずなのに、こんなに威力があるなんて!
「ボーっとしているんじゃありんせんよ、モコ太! アヤ! 人間の目は後ろについていねえんだ。相棒なら全方位をチェックして、魔法乙女の手助けをしなきゃダメじゃありんせんか!」
「「は、はい! お館さま!」」
助言が入った一瞬のスキを見逃さず、あたしとルナは二手に分かれて走り出した。
ちょっと待って。今、なんて言った? 人間の目は後ろについていない? ……後ろから来るってこと!?
走りながら振り返る。
燃える空から降っていたはずの火の玉は、いつの間にやらあたしを追ってきていた。追尾弾だ。
「うっは、来た!」
「アサヒお姉ちゃん、音で知らせるからね!」
「頼んだ!」
さっそく背後からピコンピコンとソナー音が聞こえてくる。
アヤちゃんが、敵弾頭の方向と距離を教えてくれているのだ。
音が急速に大きくなる。
しっかり鍋ぶたを握ったあたしは、タイミングを合わせて振り返った。
直後、火の玉が激しい音を立てて鍋ぶたにぶち当たる。
ドドドドドド!!
「熱っ!!」
いくつかは盾で防いだものの、量が多いからか、火の玉があたしの身体をかすめた。
半端ない高温に、かすっただけで皮膚が焼ける。
魔法乙女の衣装がダメージを吸収してくれていなかったら、こんな程度じゃ済まなかったはずだ。
「よくしのいだ。だが防御しているだけじゃあちきは倒せないよ?」
ひとっ飛びであたしの前に回り込んだクウミさんは、そのままの勢いであたしめがけて右の前足を地面に叩きつけた。
ドドドォォォオオン!!
間一髪、飛びすさって避けたあたしの身体を、地響きが揺らす。
こんな大質量攻撃、食らったら一発アウトだ。
思わず背筋が寒くなるあたし目がけて、間髪入れず、二撃目の踏み潰し攻撃がきた。
この距離では後ろに跳んだところで追いつかれる。
一瞬の判断で、あたしは前に跳んだ。
振り下ろされる左前足。その内側へギリギリ滑り込んだあたしは、右手のブレスレットに祈りを捧げた。
「法具顕現、魔法のハンマー!!」
身体をコマのように回転させて勢いをつけたあたしは、手の中に現れたピコハンで左前足を思いっきり叩いた。
「どっせぇぇぇえい!」
ポヒュッ!
軽い、おかしな音が響く。
「そんなおもちゃが効くかぁ!」
怒りの叫びをあげたクウミさんの左前足が光る。
違う。光ったのはその下の地面だ。
「なんだ!?」
クウミさんが動きを止め、そっと足を上げる。
光る地面に、花が一輪咲いている。
と、見る間に地面から続々と芽が出て、つぼみがふくらみ、花が咲いていく。
まるで、動画を早送りで見ているかのようだ。
「なんだ、これは……」
呆然と地面を見つめるクウミさんをよそに、あたしはなおも、ピコハンでクウミさんの身体を叩いた。
間抜けた音とともに、クウミさんの足元にどんどん花が咲いていく。お花畑が広がっていく。
「何が起こってんだ? ただのおもちゃじゃありんせんっていうのかい!?」
「へっへへ! クウミさんの溜めこんだ妖力、ぜーんぶ外に出してあげるかんね!」
「そういうことかい!」
クウミさんの巨大な尾が、唸りをあげてあたしに迫った。
九つの尾が、とっさにしゃがみ込んだあたしの頭上スレスレを、ものすごい勢いで通りすぎていく。
「そりゃ!」
すれ違いざま尾にピコハンを当てると、尾が一本、スーっと消える。
自覚があったのか、クウミさんの声に動揺の色が混じる。
「や、やめろ! やめなんし!!」
「やめないよ! もっともっと尾を減らすんだ!」
あたしは、クウミさんの攻撃を避けながら、ピコハンを当て続けた。
予想外のできごとだったのだろう。その顔に、恐怖と怒りと困惑とがないまぜになったような、何とも言えない表情が浮かぶ。
「やめろぉぉぉぉぉおおお!!」
悲鳴のような叫びとともに、クウミさんの身体から炎が波となって吹き出した。
ヤバい! この熱波、くらったら大やけどする!!
「アサヒ! 跳んで!」
「ルナ!?」
とっさにジャンプしたあたしは、身体を複雑にひねりつつ炎をアクロバティックに避けた。
「魔法の光輪!」
ギュィィィィン!!
あたしのすぐ真下――熱波を破って飛んできた五個の光の輪が、クウミさんの巨体に貼りつく。
ルナの魔法だ。光の輪が巨大キツネの毛を一斉に刈り始める。
どうやら効果はピコハンと同じようで、妖力ごと毛を刈り取って、それを地面に逃がしているようだ。
落ちた毛が花と化してその場に根づいていく。
さすがのクウミさんも、この攻撃には慌てる。
「ちょ、ちょいと何をしてくれちゃってるの! 髪は女の命でありんす! やめなんしぃぃ!」
「へっへ。ルナ、容赦ないなぁ」
「あんたを真似たのよ」
ルナが合流する。
あたしたちの見ている前で、しっぽがまた一本薄れて消える。
「何とかいけそうだね!」
「油断は禁物! このまま押し切るわよ!」
グルグルっと腕を回したそのとき、不意に、世界から音が消えた――。
「これでやっとスタートラインでありんす。かかっておいで、ヒヨッコども!」
言うや否や、右手を高く上げた。
瞬時に空が真っ赤に燃える。
言葉を失うあたしたちに向かって、クウミさんは勢いよく右手を振り下ろした。
あたしたちに向けて空からとんでもない数の火の玉が降り注ぐ。
「法具顕現、光の盾」
あたしの左手に光の盾が現れた。
だがなぜか、どことなく鍋ぶたのような形をしている。
しょーがないじゃん、慌ててたんだから!
間髪入れず、構えた鍋ぶたに火の玉が当たる。
ガガン!
「ぐっ!!」
当たった瞬間、すさまじい衝撃とともにあたしの身体がズズっと大きく後ろに下がった。
重い。手が痺れる。しっかり防いだはずなのに、こんなに威力があるなんて!
「ボーっとしているんじゃありんせんよ、モコ太! アヤ! 人間の目は後ろについていねえんだ。相棒なら全方位をチェックして、魔法乙女の手助けをしなきゃダメじゃありんせんか!」
「「は、はい! お館さま!」」
助言が入った一瞬のスキを見逃さず、あたしとルナは二手に分かれて走り出した。
ちょっと待って。今、なんて言った? 人間の目は後ろについていない? ……後ろから来るってこと!?
走りながら振り返る。
燃える空から降っていたはずの火の玉は、いつの間にやらあたしを追ってきていた。追尾弾だ。
「うっは、来た!」
「アサヒお姉ちゃん、音で知らせるからね!」
「頼んだ!」
さっそく背後からピコンピコンとソナー音が聞こえてくる。
アヤちゃんが、敵弾頭の方向と距離を教えてくれているのだ。
音が急速に大きくなる。
しっかり鍋ぶたを握ったあたしは、タイミングを合わせて振り返った。
直後、火の玉が激しい音を立てて鍋ぶたにぶち当たる。
ドドドドドド!!
「熱っ!!」
いくつかは盾で防いだものの、量が多いからか、火の玉があたしの身体をかすめた。
半端ない高温に、かすっただけで皮膚が焼ける。
魔法乙女の衣装がダメージを吸収してくれていなかったら、こんな程度じゃ済まなかったはずだ。
「よくしのいだ。だが防御しているだけじゃあちきは倒せないよ?」
ひとっ飛びであたしの前に回り込んだクウミさんは、そのままの勢いであたしめがけて右の前足を地面に叩きつけた。
ドドドォォォオオン!!
間一髪、飛びすさって避けたあたしの身体を、地響きが揺らす。
こんな大質量攻撃、食らったら一発アウトだ。
思わず背筋が寒くなるあたし目がけて、間髪入れず、二撃目の踏み潰し攻撃がきた。
この距離では後ろに跳んだところで追いつかれる。
一瞬の判断で、あたしは前に跳んだ。
振り下ろされる左前足。その内側へギリギリ滑り込んだあたしは、右手のブレスレットに祈りを捧げた。
「法具顕現、魔法のハンマー!!」
身体をコマのように回転させて勢いをつけたあたしは、手の中に現れたピコハンで左前足を思いっきり叩いた。
「どっせぇぇぇえい!」
ポヒュッ!
軽い、おかしな音が響く。
「そんなおもちゃが効くかぁ!」
怒りの叫びをあげたクウミさんの左前足が光る。
違う。光ったのはその下の地面だ。
「なんだ!?」
クウミさんが動きを止め、そっと足を上げる。
光る地面に、花が一輪咲いている。
と、見る間に地面から続々と芽が出て、つぼみがふくらみ、花が咲いていく。
まるで、動画を早送りで見ているかのようだ。
「なんだ、これは……」
呆然と地面を見つめるクウミさんをよそに、あたしはなおも、ピコハンでクウミさんの身体を叩いた。
間抜けた音とともに、クウミさんの足元にどんどん花が咲いていく。お花畑が広がっていく。
「何が起こってんだ? ただのおもちゃじゃありんせんっていうのかい!?」
「へっへへ! クウミさんの溜めこんだ妖力、ぜーんぶ外に出してあげるかんね!」
「そういうことかい!」
クウミさんの巨大な尾が、唸りをあげてあたしに迫った。
九つの尾が、とっさにしゃがみ込んだあたしの頭上スレスレを、ものすごい勢いで通りすぎていく。
「そりゃ!」
すれ違いざま尾にピコハンを当てると、尾が一本、スーっと消える。
自覚があったのか、クウミさんの声に動揺の色が混じる。
「や、やめろ! やめなんし!!」
「やめないよ! もっともっと尾を減らすんだ!」
あたしは、クウミさんの攻撃を避けながら、ピコハンを当て続けた。
予想外のできごとだったのだろう。その顔に、恐怖と怒りと困惑とがないまぜになったような、何とも言えない表情が浮かぶ。
「やめろぉぉぉぉぉおおお!!」
悲鳴のような叫びとともに、クウミさんの身体から炎が波となって吹き出した。
ヤバい! この熱波、くらったら大やけどする!!
「アサヒ! 跳んで!」
「ルナ!?」
とっさにジャンプしたあたしは、身体を複雑にひねりつつ炎をアクロバティックに避けた。
「魔法の光輪!」
ギュィィィィン!!
あたしのすぐ真下――熱波を破って飛んできた五個の光の輪が、クウミさんの巨体に貼りつく。
ルナの魔法だ。光の輪が巨大キツネの毛を一斉に刈り始める。
どうやら効果はピコハンと同じようで、妖力ごと毛を刈り取って、それを地面に逃がしているようだ。
落ちた毛が花と化してその場に根づいていく。
さすがのクウミさんも、この攻撃には慌てる。
「ちょ、ちょいと何をしてくれちゃってるの! 髪は女の命でありんす! やめなんしぃぃ!」
「へっへ。ルナ、容赦ないなぁ」
「あんたを真似たのよ」
ルナが合流する。
あたしたちの見ている前で、しっぽがまた一本薄れて消える。
「何とかいけそうだね!」
「油断は禁物! このまま押し切るわよ!」
グルグルっと腕を回したそのとき、不意に、世界から音が消えた――。