身代わり花嫁は無愛想なエリート外科医(超甘党)からの極甘溺愛を刻まれる
 筒井さんの佇まいは秘書と言うよりかも執事の方がイメージ的には近い。面談室に案内してくれた看護師さんが無言で退出していくのを見計らってから、筒井さんはお話よろしいですか? とひそひそとこちらへ声を掛けてきた。

「はい、なんでしょうか」
「美咲さまのご家族様、まずはこちらが今回のご縁談に関する書類となります。ぜひご一読いただければと存じます」

 穏やかそうな雰囲気とはかけ離れた早口の口調にはどことなく圧がある。父さんは小さく震える手で筒井さんから茶封筒を受け取った。こんな時でも筒井さんは至って冷静で、こういったやり取りはこれまで何度もこなしてきたんだろうなと言う慣れを感じさせてくれる。

「簡単にご説明させていただきます。今回翠佑太様は美咲様とのご縁談を所望しております」

 翠佑太さんなる人物が、姉さんの言う翠総合病院の御曹司か。名前を聞く限り、爽やかそうな印象を受ける。

「ですが差し当たって条件がございまして」
「条件、ですか」
「はい、そうでございますお父様。翠一族としては、次期当主となる御曹司様のお子が必要なのです。ですからこのご縁談は、子作りを前提としたものとなっております」
「子供が必要?!」

 子供を作るのが前提? 頭の中に空洞が出来るほどのインパクトに、空いた口が塞がらない。

「もし無事に美咲と佑太さんとの間に子が生まれたら……どうなるのですか」
「離婚するもよし、話し合って結婚生活を続けるのもよし……佑太様はそのようにお考えでございます」
 
 
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