身代わり花嫁は無愛想なエリート外科医(超甘党)からの極甘溺愛を刻まれる
「あ、佑太さん?」
「す、すまない。詩織が申し出を断らなかったから、ほっとして……」

 気が抜けてしまったけどもうまく抜けないこの感じ……この人、案外可愛い所もあるのかもしれない。見ているだけで胸の奥がきゅんきゅんと高鳴ってしまう。
 ひょっとしたら母性が刺激された、と言うやつなのかも。
 
「もしかして断ると思ってました?」
「ああ。だって子作りが前提の結婚だし……」
「筒井さんから頂いた書類はしっかり目を通しております。シュクレについて考えたら、断る理由なんて無いです。あなたのお母様にはとってもお世話になりましたから」

 俺の母親が……と目を丸くさせた佑太さん。京子さんですが……と返すとそうか。と呟きが返って来た。

「ひとまず、君が結婚に同意してくれたから、所有権は俺の母さんに戻る。才川グループには翠一族が買い取ると話は既にしてあるから……」
「流がお金をむしり取ろうとしても、阻止できると」
「そうだ」

 力強い声に、押してもびくともしない岩のような安心感が芽生えた。翠一族なら私達の身を守ってくれるとちゃんと理解できたのは助かる。

「改めてよろしくお願い申し上げます。佑太さん」
「ああ、詩織」

 佑太さんが真っすぐな視線をブラさないままこちらへと両手を差し出してきた。全体的にごつごつしている手は指が枝のように細長く、爪が綺麗にオーパルスタイルにカットされていてささくれひとつもない。見とれてしまう程にとても綺麗な手だ。
 彼から見えないように膝上で手汗をぬぐってから目の前へと差し出して握り返す。温かくてしっとりとした肌触りに、先ほど感じた安心感は更に絶対的なものになった。
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