身代わり花嫁は無愛想なエリート外科医(超甘党)からの極甘溺愛を刻まれる
「京子さん……そう、ですよね……」
「詩織ちゃんはあの2人がどうして結婚したかは聞いてる?」
「はい。聞いてはいますけど……」

 うんうんと首を縦に振っている辺り、想定内と言った具合だろうか。

「詩織、知っていたのか」
「まあね。父さんを知っている人達から一応は」
「詩織ちゃんが知っている通りだと思うわ。確かにあの2人の愛はすごかった」

 京子さんが腕を組み、話を切り出した。
 母さんは早くに両親を失い、施設で暮らしてきた。これは私も把握している事実である。大学を卒業し縁あって一流企業に就職できた彼女はそこで恋人が出来た。恋人はこれまで探し求めてきた寂しさを紛らわせてくれるような人物だったようである。

「でもその人に捨てられた。既婚者だったのよ。詩織ちゃんのお母さんはいいように利用されてきただけだった。男性不振になりつつあった彼女がその後出会ったのは、遼太郎さんだったわけ」

 父さんは母さんの心を癒してくれた。そこは紛れもない事実だ。心の傷が癒され満たされていった母さんは父さんと結ばれ私達が生まれた。
 しかしながら父さんは母さんだけを見てくれるわけじゃない。より良いケーキを作りたいと今でもなお夢を追いかけている人物でもある。

「悲しい事に、2人はすれ違っていった。あなたのお母さんは遼太郎さんからの愛が欲しかった。けど遼太郎さんは夢を追いながら愛を与え続けるのはとっても難しい事だった。二兎を追う者は一兎をも得ず……いや、一兎はなんとか得られたと言うべきかしら。勿論、遼太郎さんの腕前は素晴らしいものだけれど、ね」

 
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