身代わり花嫁は無愛想なエリート外科医(超甘党)からの極甘溺愛を刻まれる
 静かな空気が私の全身を容赦なく貫いてくる。

「母さん。俺は」
「わかってるわ。だから言ったのよ。口先では簡単だって。結局詩織ちゃんのお母さんは自分が望んでいたものを十分に得られず出ていってしまった。今はどうしているかわからない……」

 両親が離婚する時、私と姉さんは父さんの方についた関係もあってか、母さんが今どうなっているかは知らない。最初の数年は年賀状とお年玉が届いていたけど、今となっては完全に闇の中だ。

「よく考えなさいね。大丈夫だとは思うけど、念のため」
 
 まさに釘を刺された。と言う言葉がぴったりだ。実際佑太さんとのやり取りもあって浮ついていた所もあったかもしれない。

「余計なお世話だよ、母さん」

 ちらりと佑太さんを見ると、こちらもまた険しい表情を浮かべている。むしろ殺気めいたものが漂っているような気もしないでもない。

「俺は詩織の両親とは違う」
「佑太さん……」

 その声には覚悟らしき熱がしっかりと籠もっている。

「だから大丈夫。ちゃんと話し合いする」
「わかったわ。でも約束してほしい。まずはふたりとも無理はしない事。そして隠し事や嘘ついたりはしない。守れる?」
< 49 / 91 >

この作品をシェア

pagetop