身代わり花嫁は無愛想なエリート外科医(超甘党)からの極甘溺愛を刻まれる
 何が起きているのか、医療従事者ではないもののすぐに察知する。

「わかった……」
「帰る頃にまた連絡する」

 急いでその場から出ていった佑太さんの顔は、どこか心配ごとを秘めているような不安げなものに変わっていた。それに歯を食いしばっているのも一瞬だけとはいえばっちりと視界に入って来る。
 そうだ。彼は医者。2人でくつろいでいる時に呼び出しを受けるのはこれから先、何度もあり得る事。わかってはいたが、いざ体験してみると寂しさが胸の奥からこみあげて来る。

「佑太さん……」

 私以外誰もいない部屋は本当に静かで、どことなくひんやりしていた。しかもそのひんやりとした空気が針のように私の身体に突き刺さって来る。
 いつもだったら実家でひとりでいる時は落ち着けていた。私は姉さんとは別々の部屋だったからひとりでいる時間もそれなりにはあった。勉強したりもしてたけど、お布団の中にくるまって友人から借りたきわどい少女漫画とか隠れて読んだりしていたっけ。
 なのになんで今はこんなに寂しくてひとりでいるのが苦痛なのだろうか? ――ひょっとしたら親譲りかもしれない。母さんも父さんがいない日はいつもこんな気持ちだったのかも……。
 
「佑太さん……大丈夫かな……」

 彼が無事に帰って来るのを祈る事しかできない。それが事実だ。そこがより孤独さを増しているような気もする。
 ふと窓の向こうへ目をやると、すでに暗さが世界を支配し始めていた。

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