身代わり花嫁は無愛想なエリート外科医(超甘党)からの極甘溺愛を刻まれる
 佑太さんの表情は至って真剣そのもので、お世辞を言っている訳ではないのは理解できる。

「わかった。父さんに聞いてみる。ちなみにどの辺が良かった? 参考にしたい」
「チョコレートとココアパウダーのビターな味わいと、甘みのある生地、そしてバターの3つのバランスが見事に合わさっていたのが一番かな。後はボリューム感があるのも良い……それと……」
「う、うん」

 やっぱり話し出したら止まらなかった。でも味わいに関して、少なくとも分量的には参考になるはずだ。しっかりメモして父さんに話してみよう。
 キッチンに立ち、食材を見て回る。ホットケーキミックスとかお菓子作りに使う食材もっと買い込んだ方がいいかもしれない。

「お買い物に行ってからお菓子とランチ作る?」
「そうだな。スーパーに行くのとデリバリーを頼むのとどっちにするか?」

 デリバリーを頼む? そういえばそういうサービスは最近よく見かける気がする。

「佑太さんはどうしたい?」
「俺はどっちでもいいよ。デリバリーは翠家お抱えの業者だから安心できる。スーパーはいくつか網羅しているつもりだ」
「じゃあせっかくだし、スーパーであれこれ見て回ろっか」

 向かったのはタワマンから北にある会員制スーパーだった。ビッグサイズの食材から細かくサイズ分けされているものまで販売していると言うので有名なお店である。そこであれこれ食材を買い込み、家に戻ると先にマフィン作りから手を付けた。
 ボールの中にホットケーキミックスを入れようと、袋に手をかけて破こうとした時。

「あれ、うまく破けない」
「俺がやろうか?」
「大丈夫。いつもなら……っわぁあっ!」

 力を入れすぎたせいか袋を思いっきり引き裂いて中の粉をほぼ丸ごと顔面から胸部に浴びてしまった。なんかの罰ゲームみたいに粉まみれとなってしまって、全く見えない。
 最悪だ。せっかく佑太さんと一緒にお菓子作れる機会だったのに。それにこれじゃあホットケーキミックスはもう使えないのでもったいなさも併せて胸の奥がぎゅっと苦しくなる。

「っぺっぺっ……粉がっ……佑太さん、ごめんっ……」
「おい大丈夫か? 謝らないでいいし瞼は開けない方が良いぞ。シャワーで全部洗い流そう」

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