身代わり花嫁は無愛想なエリート外科医(超甘党)からの極甘溺愛を刻まれる
「ただ?」

 ソファから立ち上がった佑太さんが、私の顔を見下ろす。目じりは蕩けているのに眼光は鋭くてあべこべだ。

「いいか?」

 がばっと勢いよく彼に抱きしめられた。

「なっど、どうしたの?」
「……君はちゃんと覚えているよな。この結婚の事」

 覚えているに決まっている。京子さんからあれだけ釘を刺されているのだから。

「子作り……」
「いいか? 俺もまだ早いとは思っている。君が良いと言うまで待つつもりだ。だが……さっき、その、君の下着姿を見たら……」

 私とて初心でないからその先に続くであろう言葉はわかる。

「……引いてしまったか?」
「いや、そんな事はないよ。佑太さんは……私でいいの?」

 何を言っているんだろう。
 私以外だったらいいって訳じゃないし。それにもし、私に子供が出来たらカウントダウンが始まる。
 結婚生活にネガティブな気持ちを持っていた私にとって今の状況は何とも形容しがたい。

「俺は君しかありえないと思っているが?」

 彼のしっかりとした声が頭上に降り注ぐ。これがなぜかくすぐったい。

「私?」
「ああ、詩織以外に誰がいるんだ?」
「……」
「詩織。君は嫌か?」

 私に同意を求めてくるなんてずるい。
 いや、当たり前なのは十分理解しているのに……もうごちゃごちゃだ。

「いやじゃない」
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