身代わり花嫁は無愛想なエリート外科医(超甘党)からの極甘溺愛を刻まれる
「わかった……」

 佑太さんの身体が少し離れたかと思うと、端正な顔立ちが視界いっぱいに広がって、唇に柔らかく温かい感触が乗っかってきた。

「んっ……」

 彼の甘い香りが鼻の奥を刺激する。佑太さんの顔があまりにも近いせいか、気が付いたら呼吸の仕方を忘れてしまっていた。胸の奥がぎゅっと苦しくなって酸素を欲しているのに、唇が感じる感覚を邪魔したくなくて、吸う動作ができない。
 唇の割れ目から何かが割って入って来た。それはほとばしるような熱さを纏った、柔らかな舌。すぐに私の舌の先端にぬめりと当たると、社交ダンスにでも誘うかのようにぐいっと引っ張り上げられて、絡みつく。

「んんっむっ……!」

 私の舌の裏筋をなぞるように舐められると、骨盤当たりから脳天に向かって背骨がぞくりと震えあがった。ただこれは恐怖を覚えた時に震えるものとは違うのははっきり理解できる。理解できるからこそ、この先が知りたくなるのと怖くて一歩踏み出せないと言う、2つの感情に板挟みになる。
 こういうキスはよく大人のキスなんて例えられるのを思い出した。姉さんと一緒に見る少女漫画にもこんなキスが出てきて、あの時は恥ずかしさの余りクッションに頭を突っ込んだんだっけ。

「んんっっ……ふっ……ぷはっ……はっ……」

 空気を胸いっぱいに吸い込んだら、肺の中が張り裂けてしまいそうな痛みに襲われる。

「詩織……」

 見上げた佑太さんの顔は、さっきよりも赤みが増していた。こんなに煽情的な表情を見せる事も出来たなんて。

「ゆうた、さん……」

 心臓の鼓動がどくどく言っててうるさい。無意識に佑太さんの左胸の上にすっと手を乗せてみると、私と同じかそれ以上に忙しない鼓動がダイレクトに伝わって来た。
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